この世で嫌いなもの100の中に入るほど弥鱈にとってイベント事は嫌いだ、クリスマス・バレンタインなど以ての外恋人達の馬鹿なイベント事だと鼻で笑う程度のもので決して貰わないから僻みではない、社会人になれば勿論そんなものは女性から貰うこともあるし恋人が出来れば渡されたこともあった
だがしかし甘い物が特別好きな訳でもない彼にとって手作りは地獄で市販のものも大抵予想通りの味でありがた迷惑だった
「ほ、ほら弥鱈くんって甘いもの嫌いって聞いてたから用意してないの」
「は?」
あくまでそれはどうでもいい人間から渡されるものが迷惑な物で、目の前で大量のチョコレートを箱に入れて歩いていた彼女が困ったように眉を八の字にして言うものだから言葉が漏れた
いや確かにその通りだが周りにも甘いものが苦手な人間は多くいただろう…と思いつつ、代表になる他立会人を見れば珈琲を飲んでニヤリと笑っていた
「ごめんね」
やはりバレンタインなんてクソだ、まさか恋人からも貰えないとは予想出来ず、オマケにこの世界で1番の最愛の人から貰えないとは想像がつかなかった他のイベントごと祝いごとを盛大に祝うタイプの彼女がまさか…と思ったがこれが現実
結果弥鱈は家に帰りオンラインゲームでいつも通り皆とバレンタインはクソだと語った、いつも通りエナジードリンク片手にPC画面を見つめてゲームに勤しめば夜更けとはいえチャイムがなる
居留守を決めようと思ったがインターホンの画面に見えた彼女に慌ててドアを開ければ鼻を赤くした恋人が立っていた
「どうしたんですかなまえさん」
「夜遅くにごめんね、その渡せなかったの事情があったから」
「…なんですか」
「これ作ってて…よかったら、その一緒に食べないかな?と思って」
小さな小包を片手にその他の荷物を持ってなかった彼女を部屋にあげてやりゲームを閉じて少し乱れた部屋の中を適当にととのえればコートを脱いだ彼女はスウェット姿だった
「お腹まだ入る?」
「えぇ」
言われなくても入れてやると思いつつ現れたタッパーの蓋を開ければ暖かい里芋の煮っころがしが現れる
昔食べた時に美味しかったと絶賛したそれに彼女は恥ずかしそうな顔をして箸を渡してくれる、両手を合わせて小さくいただきますと告げて口の中に放り込む
「すごく美味しいです」
「よかった、甘いの嫌って言ってたから他にいいもの考えれなくて前これ美味しいって言ってたから出来たて食べて欲しいなぁ…なんて迷惑だったでしょ」
「いえ凄く嬉しいです…でも、なまえさんから貰えるなら甘いものでも嬉しいですから、次回はチョコレート貰えますか?」
恥ずかしげにそう言った弥鱈になまえは笑顔で頷いた、その後無言で食べてくれた彼をみて一晩泊まって朝方に帰ったなまえの背中を見て、もう二度と甘いものが嫌いだとバレンタインが嫌いだとは言わないようにしようと誓うのだった
弥鱈
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