バレンタインは昔から大好きだ、趣味で作るお菓子たちを人に気にせず渡せる日であるからだろう、だがしかし悩みの種がひとつある本命というものだった
今年だけは本命チョコを作ってみた、全員が食べられるようなカップケーキではない1人だけ特別仕様の箱の中にはクッキーやチョコレートやマカロンなんて甘いものの宝石箱だった、この日の為に買い揃えた道具や挑戦した味もあったが受け入れられるのか分からなかった、だけどこの気持ちは特別だからきっと悪いようには行かない…はずだ
「バレンタインですから人数分ありますのでよければ」
「わぁ凄いこれって全部なまえさんが作ったの?」
「え、ぁ…銅寺さん、えぇはい私があのそ、そうですね」
「凄いねパティシエみたいだ」
「昔からお菓子作り好きだから」
「へー、僕料理はあんまりなんだよね、一人暮らしだからそれなりにはするけどお菓子なんて作ったこともないや、すごいね」
目線の変わらない彼の変わった瞳に目を奪われながら言わなきゃと思いつつも言葉は出てこずに手元にあった、賭郎用のカップケーキが彼の手に渡ってしまいその場で口に放り込まれる
それだけどそれじゃないんです、とは言いきれず嬉しそうな彼の口の中に消える
「甘すぎず薄すぎずナイスですね、もう1つ貰っちゃダメだよね」
「ええっとそうだね、ひとり一個しか作ってないから」
「だよね、なまえさんが作るの美味しいからもっと食べたかったんだけどなぁ」
なんて残念そうに言う銅寺に思わずなまえは手元にあったカップケーキをテーブルに置いて、彼の手を引いて人気の少ない場所に連れていく、勿論用意した箱も忘れずに
辺りを見渡して誰もいないことを確認すればなまえは目の前でよく分かっていない顔の銅寺に両手で紙袋を差し出す
「これ私から銅寺さんへの本命なんです貰ってください!」
少し大きくはりあげた声が廊下に響いたが誰もいない為に騒がれることも無い、目を丸くしたあとその紙袋からでてきた缶の入れ物を開けた
「わぁすごっ」
まるで子供のように無垢な反応を見せる彼に好きだと感じつつ、どきどきと高鳴る心臓を抑えるように見ていれば2色のキューブクッキーが彼の少し大きな口の中に消えていく、それからも無言でボンボンショコラやトリュフにマカロンが消えていく
「なまえさん口開けて」
「え、あっ」
指示通りに口を開ければ自信作の薔薇型のボンボンショコラが口の中に落とされる、ふわりと香るローズとフランボワーズに良かった美味しいと安心していれば銅寺は箱に蓋をした
「今日仕事終わり2人でこれ食べようよ…もちろん良ければだけどOK?」
「いいの?」
「僕は勿論、本命を貰ったんだから答えを伝えなきゃダメだしね…今じゃなくてもっとちゃんと伝えたいから」
その言葉に頭の中が真っ白になったが口の中は自分史上最高に甘いチョコレートの味が広がって、思わず力強く自分を殴れば鼻血が出たが夢じゃない、本命用を作ってよかったと喜ぶ自分と血を見て喜ぶ銅寺くんの温度差を今はまだ気付かない。
銅寺
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