愛をこめて花束を


風船が空を泳いでる姿を見てふと流れ道を見て出てきた先には白い花嫁と笑い合う家族達と幸せそうな新郎の姿が見えた、ふと隣にいた彼女が珍しそうにそれを見て

「素敵だね」

そう零した時、自分で彼女を幸せに出来るのだろうかと思った
彼女と出会ったのは貘の紹介で裏社会を知っているとはいえごく普通の彼女の雰囲気に飲まれて好きだと思った、女性経験の多くない自分を笑わずにからかわずに「ありがとう」と答えて手を取ってくれるほどの強い女性である
だからこそ自分ではない別の人の方がいいのではないかと思う、それそこ関わりのある賭郎であったり、身近な人達を思い浮かべる自分はマイナス思考が抜けないでいた

「和と洋どっちが好き」

「え、今の気分は」

「違うよ、結婚式するとしたら」

「僕はどっちでも好きですね、欲を言うならやっぱり両方見たいですけど」

「そうだねぇスーツ姿はよく見てるけど梶くんの白スーツは珍しいしなぁ、でも和服もかっこいいし捨てがたいなぁ」

手をぎゅっと握って楽しそうに話をする彼女の目にもあの結婚式をしていた、夫婦となる2人に対して羨望したのだろう
ふと仙狸が足を止める

「ねぇ梶くん、結婚しようよ」

「え」

突然そういった彼女は手を離して1歩前に出て振り向いて笑った、まるで悪戯に成功したような子供みたいな顔でいって、彼女の黒髪が風になびいて揺れていた、答えを出す前に

「なーんてね、でもいつか覚悟が出来たら一緒になろうね」

と告げて背中を見せた彼女に何も言えなくなりただ手を握って帰路を歩く、あの時直ぐに答えを出せたなら彼女に辛い思いをさせなかったのだろうかと考えてしまう、それはあの日の背中があまりにも悲しそうに見えたからだ
夜中になっても寝付けずに珈琲を飲みながら物思いにふける、皆はもう随分前に寝てしまう中で梶は考えた、彼女と本当に籍を入れようかと

「君のこと私が守ってあげるから安心して私に愛されてよ」

彼女からの告白を受けた時、愛されることが怖かった、自分が役立てることは命を張りいつだって前線に立ち死ぬ事だと思えていたからかもしれない、強い彼女はいつだって真っ直ぐと心の奥まで見透かすように梶をみて愛を伝えてくれるのだ
だからこそ答えなければならないと梶は考えて目の前のパソコンを開く、そういえば近々大きな仕事が立て続けに来るはずだったと思い出しながら考える

「仙狸さんの手って小さいですね」

「そう?梶くんの手が思ったより大きいからかもね」

まずは彼女の手のサイズを知って、似合うであろう指輪を探し歩いた1人じゃ来づらい店に入って結婚指輪を探す綺麗な女性店員たちにサプライズですか?と聞かれながらはいそうです…と答えてどれがいいか分からずに探していく

「これでお願いします」

至ってシンプルでどこでも付けやすそうだが決して安物ではないそれなりの指輪の入った紙袋を片手にさてどうするかと考える
そもそも彼女はプロポーズを受けてくれるのか、また喜んでくれるのかさえ想像も付かずに焦ってしまうばかりだった
だがしかし考えても仕方が無いと次に入ったのはスーツのブランド店だった、中に入り普段選ばないものを見つめては悩んでしまい頭を抱えていれば即座に現れたスタッフと相談をする

「ふぅ…中々時間かかったな」

結果スーツ1式小物1式と購入すれば金額は当然ながら試着時間も合わせれば丸一日かかってしまうほどだった
ホテルに帰れば楽しそうに話をしている2人を横目にメールを打ち込んだ

"今度の土曜日、よければディナー行きませんか"

送信メールを送るまでに数分はかかったが諦めて梶は送ってしまえば5分後に連絡がやってきた

"勿論、場所と時間は決まってる?"

早い返事は有り難い部分だ、簡単に返事を差し出して広々とした一人で寝るには広いダブルベッドに飛び込んでため息をこぼす、1番そばにいてくれた貘やマルコにはこの事を伝えれば素直に頑張れと背中を押されたが気分は正直あまり良くなく、悪いことばかりを当日も考えた
タクシーで迎えに行けば出てきた彼女は少し丈の長いワンピースの裾を揺らして現れた、目を奪われていればクスクスと笑っていることに気付き回らない頭で予約をしていた店に行く

「こんな所二人で来てよかったのかな」

「2人だから来たかったんです、賭郎の人達にどのお店がいいか教えてもらったんです」

「こんなお店あんまり来ないから恥ずかしいな…テーブルマナーとか厳しいでしょ?」

珍しく恥ずかしそうにそう話してくれた彼女に親近感が湧いて、僕もですと小さく話してコース料理に手をつける流れるジャズピアノやシャンパンに満足感の非常に高い料理達に感動を覚えながら今日はそれだけじゃないと自身のポケットにある結婚指輪の箱を確認しながら胸がざわつく

「仙狸さんあの」

「なぁに梶くん」

「言いたいことがあって」

「ごめんちょっと待って、連絡きたから少し出てくる待ってて」

1番大事な場面で仙狸は申し訳なさそうに席に立ち上がり梶の肩に触れて背中を見せて行ってしまう
なんとタイミングがいい事かと深いため息を零しながら薄暗くランプの灯った美しい店内をシャンパン片手に眺めた、近くのウエイトレスが食後のデザートの準備をすると案内を受けて返事をした梶はふと結婚指輪の箱に触れればそこにはあったはずの感触がなかった

「な、ない!」

思わず少し大きな声を出して服を探っても出てこず、特に御手洗に出たわけでもなく大きく動いた覚えもなくさらに焦りが続く中でふとランプの灯りが全部消えてしまい、真っ暗な店内になり店の中はざわつき始めた、だがしかし先程まで演奏されていたピアノは止まらずに店の中で音を刻む
焦りと緊張と自身の情けなさに打ちのめされて泣き出しそうだった、いつだって自分はそういう人間なのだと思い出させられると思った時だった灯りが一人の女性を照らして彼女は近づいた

「仙狸さんあの…終わったんですね」

「隆臣くん」

ふと彼女の耳が赤いこと、少し汗をかいていたことに気付いた時にそれを言う前に彼女は静かなピアノの流れる店内で言った、全員が聞こえる凛とした声だった

「私と結婚してください」

跪く事はなく彼女は目の前の椅子に座って先程無くしていたと思っていた結婚指輪の箱から見たことのなかった指輪が出される
2.3分の沈黙が流れたあと梶は声も出ずに小さく首を縦に降ったと同時に店内はまるでショーを見物しているようにジャズミュージックが流れてクラッカーが割れて口笛やはやし立てる声が聞こえた

「仙狸さんこれどういう」

「結婚しようって言ったでしょ」

「でもあれは」

「覚悟が出来たら…そう言ったでしょ」

覚悟ってなんだと思ったがきっとここまで準備をすることだったのかもしれない、指輪を受け取ってふと手を見れば彼女の指には指輪ははめられておらず梶の手の中に指輪が返される

「ねぇ、答え聞きたいな」

「…僕こそ、結婚してください」

「勿論、喜んで」

きっと人生で数える程度しか見れない彼女の泣き顔だった、お互いの指輪を交換するように付け合って微笑んだ
ふと周りを見れば全員見た事のあるメンツであぁある意味はめられたのだと気づいたが悪い気分ではなく、やってきたデザートプレートには"おめでとう byBK"と記載がされており、2人は珈琲と共にそれを味わった

気分のよいまま帰ろうとタクシーを拾ったと思いきや仙狸はホテルではない場所を告げた、東京の夜景の有名な場所に連れてこられた梶は酔いなど元からなく先を行く彼女を追いかけるように歩いた

「私本当は怖かったの、嫌がられたらどうしようかなぁって」

「そんなわけないでしょ、僕が仙狸さんのことを」

「それは私も同じなんだよ」

その言葉にハッと息を飲み込んだ、悩んでいたの彼女も同じでずっと同じ気持ちだと言われて梶はぐっと唾を飲み込み仙狸に近づき腕を掴み抱きしめる、柔らかく香る香水の香りとお酒の香りが混ざり鼻をくすぐる

「僕は何より大好きです、これから先一生守っていきたいから…だからこれからもずっと僕のそばにいてよ」

弱々しい彼の言葉に仙狸はふと上を見上げて泣きそうな梶の唇に重ねる、少し弱まる力を言い様に頬に手を添えて何度も口付ければ彼の唇に口紅がうつった

「隆臣くんこそ私の傍からずっと離れないでね」

夜景をバックに抱きしめ合う2人は幸せそうに微笑みまた口付けた、誓いのキスを今誓って、病める時も健やかなる時も互いを支え合い笑い合えるようにと互いに思いあって心から愛していると誓いあって。