許したわけではない
旦那である沖田と東京の警備にあたっていると、御庭番のプライベートタイムに出くわした。
一瞬緊迫した空気が漂う。
最も、ボク篠宮シノは元からこういう性格だったわけではなく、
旦那の生前女性特有の身なりと話し方をしていた。(あたりまえであるが)

その時、四乃森蒼紫は15歳だった。ボクは沖田と同い年であったから、
年下の蒼紫を可愛いぐらいにしか思ってなかった。

「…お前、名はなんという」
「ちょっと!私あなたの年上なんだけど?あなたのことなら知ってるわ、御庭番衆の若き天才お頭でしょ。
私は沖田さんの妻、沖田シノよ」


「…妻、か」
「どうしたんです?蒼紫さん。ボクにお嫁さんがいちゃ可笑しいですか?」
「ぷくく…」

「ちょっと!なに斉藤さんが笑ってるんですか!!!」
「いや、お前が子供扱いされていると思うとな…すまん、つい」
「ボクはこれでも新選組一番隊隊長ですよ!!!」

場は、斉藤さんにしてやられたのか一瞬で和んだ。
旦那は椿をぐしゃっと握りつぶし、舌打ちをしてボクの手を引いていった。

***

一方、時は明治。旦那が死去してから随分時が流れた。
ボクは緋村の彼女の道場に居候させてもらっている。
このごろ、誰かに付けられている気がする。

「大丈夫でござるか?シノ殿。最近うかない顔をしているように思えるが…」
「旦那と東京を歩いていた時、御庭番衆に出くわしたことを思い出したんだ。
浮かないといえば、最近付けられている気がするな」

「…そうでござったか。拙者、シノ殿と見回りに行くでござるよ」

「いいのか?」
「シノ殿の身になにかあれば、薫殿達も悲しむでござるからな」


お人好しになった緋村と道場を出てあたりを散策する。
分かれ道で緋村と別れ、ついに犯人を突き止めた。

「般若…隠蜜御庭番衆か!おまえだったんだな、ボクの命を狙いに来たのか?」
「いえむしろ逆です。お頭に頼まれ、あなたを連れ戻しに来ました」
「連れ戻す…?ボクは御庭番衆になった覚えはないぞ。それに、今は緋村と――――」


「オレでは不服か?」
「お頭!」
「四乃森蒼紫…」

「蒼紫…!!!」
「ようやく来たな。緋村、こいつは頂いていく」
「…シノ殿」
「こんな町中で戦いはできんだろう。しばらくお預かりになるだけだ、薫たちに話しておいてくれ」
「…了解した」





――――その後、蒼紫がぼそりと呟いた言葉がいつまでも胸に響いていた。

「幕末、お前がシノに付けた傷を許したわけではない」

と。
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