haco

明日がきっと好きになる : 前

ふと耳に届いた音に読み勧めていた本から顔をあげると
丁度カービィがワープスターに乗ってシュリルの目の前を慌しく通り過ぎる。
その際にぶわり、とシュリルの髪を舞い上げた。

呆れるほど平和、という事を掲げているにしては
何かしら侵略やらの事件がしょっちゅう巻き起こる、ここプププランド
舞い上がった髪を押さえながらシュリルは何か起こるそんな予感を胸に
本に栞を挟み、期待を胸にカービィの飛び去った方向へ歩き出す

道を歩きながら少しすると道の途中に誰かが立ち尽くしていた
その人物はその場から動く様子を見せない。が、
特に周辺に物珍しい物もあるわけでもないのに珍しげに辺りを見回していた

「…どうしたんだろう?」

と無意識にその言葉は口から漏れていた。
その小さなつぶやきはその人物に聞こえていたようで、
シュリルの方へ振り向きゆっくりとその一つ目の視線をシュリルに定める

ぞくり、

その一つ目の視線が交互に混じり思わず呼吸が止まる。
背筋には悪寒が走り嫌な汗がじっとりと噴出した。

直感的に感じたものは恐怖

陽気でのんびりとしたプププランドには一番似合わないそれ
その雰囲気に此処から一目散に逃げ出したい衝動に駆られるが
ぐっ、と堪える

さっきから見てたけど辺りを珍しげに見回していたし
…恐らく…困っているのかもしれない

と、この人物の先程からの様子を思い出して意を決して話しかける
此処で逃げずに声を掛ける辺り自分はやはりお人好しなのかもしれない、と内心自嘲せざる終えない、

「こ、こんにちは!…お困りです、か」
「貴様に聞きたいことがある」

その威圧感からか思わず噛んでどもってしまったが
途中噛んだ事に対する恥ずかしさを感じる間もなく相手のから声で圧され
申し訳ないがひっ、と小さな悲鳴もオマケ付きであげてしまった
見た目も然る事ながら殺気が漂う雰囲気と威圧感大きさに
ただただ圧倒され、無意識の内に声が震えてしまうのはもうしょうがないと
折れかけた心と自分に言い聞かして何とか奮い立たせる

だけど聞きたい事があるってことはやっぱり困っていたみたい。

人を見た目で判断するのは失礼だけどやっぱり怖いものは怖い
相手に震えた声が悟られないように必死に平常心を保って聞き返す

「はい。何でしょう、か…」
「星のカービィは何処にいる」
「え、カービィ…ですか?」

相手の言葉を聞いて此方に飛んでいったカービィを思い出す。
カービィはこっちに飛んでった筈だし此処に立ち尽くして居たならすれ違っていても可笑しくない筈たけど…
カービィはワープスターに載っていたし高度上昇して見えなかったかもしれない

「…こっちにカービィが飛んでいった筈ですが、すれ違いませんでしたか?」
「それらしいのは見かけていない」
「うーん、えっと。…じゃあカービィに用があったならカービィの家まで案内しましょうか?」

待っていたら帰ってくるでしょうし、と補足を入れると目の前の人物は考え込んでしまう。
このままこの人をカービィの家まで連れて行くのは正直怖いがは
カービィは意外に友達が多いからもしこの人と友人関係であるのなら
友人に会えるまで 此処で放置して待ちぼうけをさせてしまうのは可哀想だ

とりあえず出会ったのも何かの縁だし名前を聞いても別に良いだろう

「…あの。お名前聞いても大丈夫ですか…?」
「…ダークマターだ」
「ダークマターさんですか!かっこいいお名前ですね。…私はシュリルと申します」

ダークマターさんというらしい。格好良い名前だと思う。暗黒物質さん。
人の名前を覚えるのが苦手なシュリルだが不思議とこの名前はすとんと覚えられた
シュリルが自己紹介するとシュリルの名前を何度も噛み砕くように呟くダークマターさんは
何だか微笑ましく見えたのは秘密だ

「…シュリル。悪いが星のカービィではなくこの国の王の城へ案内を頼む」
「はい、良いですよ。じゃあ、私にちゃんと付いて来て下さいね」

ダークマターさんの頼みにしっかりと頷いて自分に確り付いて来るように言う
こんな事を言うのは失礼かもしれないが彼は見た目の割にはえらく礼儀正しくて従順だ。
驚くほど素直に言うことに頷いてくれる。ただ突き刺さる視線がとても気になるが
シュリルは後ろについてくるダークマターを確認しつつデデデ大王の城の方向へ歩き出した。




2020.10.04 名前変換修正
2020.05.05 加筆修正(2部に分けました)
2012.03.27
2012.09.18 書き直し
2015.07.09 修正+加筆

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