虚ろな目で迷子の子供のように辺りをゆっくりと見回す挙動をしてしまう 同じ空間に同族の暗黒物質を見かけたが、向こうとは決して視線が交わる事は無い ゼロ様に作られた同じダークマター達はそれぞれの個体に興味を持つことをしない 別個体と話した事は恐らく一度もないといっていいだろう。 自分自身にとってもそんな事は至極どうでもよく思っているのだから。 向こうの別個体もこちらに興味を持つことはなく足早に暗黒に融けて消える ただ私に対しては特定の上位の個体達はまるで汚物や劣等した物を嘲笑うように蔑む でも蔑まれても私にはゼロ様さえ、いらっしゃればそれで良い。 私にはゼロ様こそが全てなのだ。 「此処に居たか」 植え込まれた本能。最愛の主君の声が聞こえ 思考、体、何もかもが恍惚とゼロ様へ向けられる (ああ、ゼロ様。我らが偉大な主、) ゼロ様は背がお高いから必然と見上げる形となる 視線が突き刺さるが恍惚の笑みが無意識に浮かび上がる ゼロ様の瞳にはいつもどおりの威圧的な冷酷さしかない だが鋭い視線が突き刺さる感覚は自分にとっては ゼロ様が私を見てくれる、と安堵させるものに変わっている。 「嗚呼、愚鈍な出来損ない」 ゼロ様のその声音は狂気と蔑みと ほんのちょっとの優しさを孕みながら 私を蝕むどろどろとしたおぞましい心酔をひどく穏やかなものにした。 (我らを統べる、白き闇の王よ) 嗚呼!いつの日にかゼロ様のお役に立てる、という無上の喜びを、幸福を、私に与え賜え 処女作兼、出来損ない 2020.05.07 加筆修正 2015/11/07 /lain0x2/novel/1/?index=1 |