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大王様と過ごす昼下がり

「おう、何やってんだシュリル」
「大王様、こんにちは。今お菓子を作り終わった所なんですよ。」

呆れるほど平和なプププランドの昼下がり。
何やら変装にサングラスをしてやってきたこの国の大王様は
お菓子の焼きたての匂いにつられてひょっこりと窓から顔を覗かした

これでもこの国を纏める大王様なのだが
目の前のお菓子に目をらんらんと輝かせるさまは子供と大差ない事だろう

「大王様、宜しければお菓子の味見をしていきませんか?」
 お恥ずかしい話作り過ぎてしまったので
 食べて行ってくれたら私、すごく助かるんですよね。」
「おうおう、任せろ!
 こんなに美味そうな匂いを漂わせてるのに
 ありつけなかったら逆にどうしようかと思ったぐらいだ」

ニッカリとサングラスの下の青い目が細まる様子に
つい子供みたいで可愛いなぁ、とこちらもにっこりしてしまう
それに大王様は作ったお菓子を本当に美味しそうに
食べてくれるのだからついつい甘やかしてしまっているというのも事実ではある。
外に備え付けてある木のテーブルにお菓子と紅茶を2人分入れる
大王様が早く食べたいからかお菓子の入ったお皿を
一緒に運んでくれて準備はすぐに終わった

早速2人で天気のいい青空の下お菓子を広げ紅茶を注いであげると
大王様はワクワクしながら椅子にどかりと座りながらも手は既にお菓子に伸びていた

「おお、クッキーも上手いがこれもなかなか…なんて菓子だ?」
「名前付いてないんですよ。
 ウィスピーウッズさんのリンゴを頂いたので
 蜜と煮詰めてタルト生地に乗せて一緒に焼いたんです。
 美味しいなら良かった!」

うまいうまい、なんて言いながら
手が止まらずもちゃ食べる様を微笑ましく見つめる
実は大王様が来るのを見越して
大王様好みの甘いお菓子を用意してたのは秘密だ
私は密かにこの優しい時間が好きだったりする
大王様の事は時々困らせられるけど
これでも尊敬してるしこう言った一面を知っているからこそ憎めないんだよなぁとぼんやり思う

「名前これ今度また焼いてくれよ」
「勿論良いですよ。大王様相当気に入ってくれたんですね」
「ああ、このお菓子凄く好きだぞ!気に入った」

好きだ、の言葉にほのかなトキメキを感じつつ
でもそんな事もつゆ知らず目の前の大王様はお菓子がよほど美味しかったのかずっとニコニコしている

「勿論良いですよ!新作も考えて作っておきますね」
「お、それは楽しみだなまた近いうちに抜け出さないとな」

そんなゆったりとした大王様と過ごす昼下がりのお話

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