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[ ▶星野 ▶LAL ]
白き冥灯の誘い

微睡む意識の中で私は気がつくと
深く暗い真っ暗な闇の中に立っていた
これは夢の中なのだろうか?
不安になり周りを見渡してみると
ただただ暗黒が周囲に満ちているだけで
不安が更に勢いを増して心細くなった。

「どこだろう、ここ…」

『ほう。繋ぎとしては丁度良い、か』

ふと聞こえた声音に
はっとして声の方へ顔を向けると
この暗黒の中で何の光もないというのに
異質に、白く白く浮かび上がり
赤い瞳からの視線が鋭く私を冷たく射抜いた

まるで声を出すのも恐れ多くなるような
そんな圧倒するような雰囲気を醸し出す
その白をただただ見つめる事しかできない
初めて、人を怖いと思った

『意識があるのか』

ほんの少し愉快そうな声音と表情に
どきりとして視線が釘付けになる
目が、視線が、逸らせない

『御前、名は』

シュリルです、と言葉にしたつもりが
無意識に喉が締まり声になることはなく、さらに言えば呼吸もしづらく苦しい程だ
…ただ私の言葉は目の前の御方には届いたようで、引き続き言葉を連ねた

『そうか。…シュリル。何も怖がる事はない。私の声を、よく聞け』

まるで耳元で囁かれるようなその言葉が私の耳を、思考を頭を痺れさせるようにどろり、どろりと蕩けさせる。
次第に思考も、何もかもが考えられない

肉質の強い湿り気の音がした
白い闇が自分の眼球に指先を突き立て掻き出すように指を動かした
目の前の衝撃的な出来事も蕩けた思考の中でただただ惚けて見ていることしかできない

そうして抉り出された赤い眼球を
無抵抗な私の口元に押し当てられる

くだれ』

その言葉一つで十分だった。何かに突き動かされるように私は口元に押し当てられた眼球を口に含んだ。
ただ、一口で飲み込むには少し大きいものだった為 えずきながら、眼球を飲み下し、喉へ、体内へ取り込んだ


えずきながらも自身の眼球を飲み込んだシュリルを満足そうに見て白い闇はシュリルを見て笑う

『私の手を取れ、シュリル。』

力強いその声。
シュリルは従う様に手を伸ばした
白い闇に触れるとそれは指先から侵食していく。だが、最初の様な不安も心細さなどは微塵もなくなり、快楽にも似た心地よさがシュリルを包んだ

『私に身を委ねるんだ』

私は この御方の手となり 足とならなくては

崇拝にも似た思念、思想が芽生えてそのままシュリルの思考と精神、何もかもを支配を支配し、白い闇が白く、白く塗りつぶしていく。

そうして浮上する感覚にこの暗闇の中、目の前の御方に救われた、と言う強い、強い確信と信頼を持ってシュリルは目覚めた

「ああ、なんと御し易い。流石は人畜無害といった所か。」
( 喜ぶがいい、これからお前は人にとって害でしかくなる )

耳元で笑う白い闇に
シュリルは恍惚の笑みを浮かべた
溟い淵にてシュリルを呼ぶ声が聞こえる

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