これはワタシタチの物語。 誰かであって、誰かだったワタシタチが、ダレカになろうとする。 そんな、報われず救われず、スクワレタ物語。 誰かだった頃の最期の記憶は目。 赤くて黒くて深くて不快な目。 私をワタシタチにした尊いモノ。 空からソレが堕ちて来て、私達の日常を黒く黒く黒く塗りつぶしていった。 誰も彼も黒になっていった。 木も川も空も海も大事だったはずの場所も人も何もかも。 私はその時はまだ私のままだった。 私として捕えられ、それを見た。 見てしまった。 いくつもの腕と足。細くて太くて綺麗で逞しい。 そして顔のない顔と顔と顔。 呻き嘆き怒り狂い嘲りそして歓喜していた。 それら感情は彼らのものだ。 カレラは願っていた。 願い続けていた。 回帰を復古を覚醒を自律を自我を彼我を 願う願う願う願う願う願う願う願う願う願う。 そのために誰かだった事を思い出すために誰かをダレカにする。 ああ、いま、手が、伸びてくる。 手と手を繋ぎ指が砕けて混ざり飲まれて生えて生えて生えてどこまでが私だったのか首を掴まれたそれは首じゃなくて足で腕で腹で背中で顔を剥がれ私は私は私私私私私私私私私私はワタシタチになった。 ワタシタチは、ワタシタチが誰かだったことを忘れられない。 ワタシタチは私が欲しい。 もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと 私が必要だ。 次の私、その次の私、次の次の私が、ワタシタチを私にしてくれるはずだ。 だから手を伸ばそう伸ばそう伸ばそう。 きっとその先にワタシタチの望む「奇跡」があるはずだから だから、お前は、「私」だ 2022.06.08 次人執筆/サイトup /lain0x2/novel/1/?index=1 |