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花腐らしの雨

空を飛ぶブロントバートに目線がつられそのまま目線を遠くの空に移すと
確かに遠くには黒くどんよりとした雲がこちらに向かって風の吹くまま静かに忍び寄っていた
こりゃ雨が来そうだな、なんて思いながら
外に干した洗濯物も無事に取り込みおわる

一息つく間も無く空に立ち込める暗雲を見上げた所で唐突にある人物の事が思い浮かんだ

「…マターさん大丈夫かな」

空に立ち込める雨雲に湿った空気の匂い
もしかしたら雨でずぶ濡れになって風邪を引いてしまったら、と考えて
私は急いで玄関の扉を開け傘を引ったくるように取って小走りで
マターさんとの何時もの待ち合わせ場所へと急いだ

遠くにあったどんよりとした黒く厚い雲はあっという間に青空を包み隠していた

「(あぁっ、雨降ってきちゃった…!)」

しかし家から目的地まで少し距離があるためか着く前に
しとしと 雨粒は空から振り出し始めてしまっていた
小走りの中 雨足は強くなっていて
マターさんがいるであろう目的地につく頃には
靴は跳ねた泥水によってずぶ濡れになっていた。

「マターさん!」
「シュリルか、どうしたんだそんなに急いで」
「あれ、マターさん濡れて、ない…?」

急いできたは良いものの心配していた人物は
木の下に居たことによってそんなに雨に濡れてはいなかった
安心して傘を閉じてマターさんの横に滑り込む

「良かった。マターさん雨で濡れてるかもしれないと思って急いできたんですよ」
「あめ?」
「雨ってのはこの天気の事ですよ」
「ほう。雨というのか、これは」
「そっか、雨を見るのも初めてですよね」
「ああ、シュリルが来るまで眺めていた」

隣をみると感慨深そうにこの情景を眺めているマターさんに自然と目を奪われる
すると唐突にマターさんが此方を向いたためかお互い視線が交わる

「そうだ、シュリル」
「…?何でしょう、マターさん」
「こんな雨のなか私に別の用事でもあったのか?」
「秘密です」
「?」

少し困惑したような私のいつもと違った態度に疑問を抱いているようだったけど
自然と本来此処に来た目的の事を置いておいて、
暫くこのまま一緒に雨の降りつづける中一緒に居たい
もう少ししたら言おう、と

「マターさん」
「どうした、シュリル」
「あとちょっとだけ一緒にここで雨避けして良いですか?」
「?別に構わない。それに一人でいるよりシュリルといる方が落ち着くからな、そうしてくれ」
「…っあ、ありがとうございます……」

少し柔らかな落ち着いている言い方に
私は思わず照れてしまって語尾はほとんど聞き取れなかっただろう
しかしマターさんはそんな私に馴れたのかほとんど気にも留めない
一人で照れて恥ずかしがってなにやっているんだ、そう考えて自分を落ち着かせて赤く染まって熱い頬を冷ます

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紅い頬も十分に冷えた頃には
この静かな時間が名残惜しく感じるが
雨も強くなってきたのでそろそろ本題を口にした

「マターさん雨が少し強くなってきましたし
 このまま此処にいても濡れちゃうと思うので
 雨がやむまで私の家に来ませか?」
「シュリルの家にか?」
「はい!それに色んな事もお話ししたいですし
 暖かい飲み物でも飲みながら気長にお話ししませんか?」
「シュリルが構わないなら」
「はい!雨の日ってちょっとだけ気持ちが暗くなっちゃうから
 マターさんとお家でまったり出来たらすごく嬉しいです!」

最初は少し困惑した様子だったマターさんも
そう言うと承諾してくれた事に安心する。
そうと決まればこれ以上強くなる前に家に向かってしまおうと
じゃあ行きましょうマターさん、と手に持っていた濡れた傘を広げて
マターさんの手を引いて一緒に入るように肩をくっつけると
少し隣で居心地悪そうにしているマターさんが見ることが出来て
中々に見ることの無い珍しい可愛いなぁとにんまりと嬉しく感じつつ

一緒に肩を並べて1つしかない
少し大きな傘を指して私の家へと歩みを進めた


(「マターさん。もし明日雨が止んだら絶対夜は星が綺麗ですから見に行きませんか」)
(「シュリルが良ければ一緒に見に行こう」)
(「やった!あと雨の降って止んだ後は空に虹っていうのが
 出てるんですけど赤橙黄緑青藍紫の七色の大きなアーチのかたちがはっきりと見えて綺麗なんですよ」)
(「……虹?」)
(「マターさん?」)




2020.05.05 加筆修正
2012.11.24

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since,2011.01.01~2020.01.01 / 野箱