haco

さよならを教えて

どれくらい待ったのだろうか
太陽が昇り沈み太陽を追いかけるように月も昇り沈む。
数日前にカービィが虹島に向かってから
空の虹島は確実に以前の姿を取り戻しつつあった
そんな光景を何度も繰り返す様子を見ながら
大切な友人を待ち続けた。

「カービィが頑張ってるのかな」

カービィも虹島に向かってから早くてもう数日経っただろう
けれどその数日でもう半分以上の虹が元に戻っていた
それに伴いプププランドの皆も最初は大騒ぎしたものの
漸く落ち着きを取り戻しつつあった

カービィならやってくれる、そんな思いをみんなが抱いて期待している中で

私も確かに虹が戻りつつあるその光景に安堵しつつも
それ以上に心の底で燻っているとある予感は確かに増大していた

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「シュリル?」

その聞きなれた口調に私は声の方向へ振り向く
しかし、其処に居るのは待ち望んだ待ち人ではなく
このプププランドを納めるデデデ大王の姿だった

「あっ、大王様…」
「…こんな所でどうしたんだ」
「えーっと…」

何処か感じた違和感に疑問を抱く
その違和感の正体が分からず思わず首を傾げて
取り敢えずここで人を待っている事を教えた

「そうか…」
「大王様?」
「いや、…何でもない」

言葉を濁す大王に私が抱いた違和感は
普段の大王様じゃない、と別の何か、
いうなれば"確信"に変わりつつあった

いつもなら大王様は遠慮なしに誰を待っているんだ、恋人か?
なんて小指を立ててニヤニヤしながら聞く人だ
ぽつり、と私の胸に落ちた予感は水面に広がる波紋のように広がっていく

「…ずっと待っているんです」
「そうか」
「大切な人、なんです」
「シュリル」
「はい?」

真剣な声音に視線が交わる。
きっとこの時に既に疑問は確信に変わった

「…逢えれば良いな」
「はい」
「ではな」

私の横を通り過ぎようとする"大王様"を呼び止めた

「マターさん」

「………」
「詳しいことは聞きません、マターさん詮索されるの嫌いだから」
「マターさんのやっている事が終わったら、良ければ帰ってきて下さいね」
「まだ沢山の事全然やり終わってないんですから、マターさん」

あの時の言葉がどうしようもなく悲しくて、
折角友人になれたのに。忘れてくれ、だなんて。
途中から嗚咽を堪え震える声で大王様の姿をしたマターさんに告げる
もう既に涙目で涙を押さえ込むようにスカートをぎゅっと握る

「これからする事にシュリルを巻き込みたくなかった」
「マター、さん…」

落ち着き払った様子で淡々と静かに告げるマターさんの言葉
混乱した頭でも容易に分かる。
きっとこれからすることにマターさんは自分を作った御方から命令があったのだろう

「すまない、本当は何も告げずここを離れるつもりだった」
「…」
「…嗚呼言ったあと、ひどく後悔したんだ、」

私は身勝手なやつだな、と自嘲するマターさん
そんなマターさんに私は言葉が咄嗟に出てこなかった

「シュリル」
「…は、はい」
「また2人で、色んなことをしよう」

そう言い切ってマターさんはすっ、とぎこちなく微笑んだ気がした
予想していた答えと違っていてそのお願いに
私は呆気にとられ目の前のマターさんを凝視してしまう

「…駄目か?」

やさしげに私を見るマターさんに
私は考えるまでもなく、

「そんな事で、良いんですか?」
「……」
「…良いですよ!まだしてない事も沢山、色んなことをしましょう!だから、」

だから、と言葉を続けて思いがけず切る
頬が濡れてる感触がする、折角我慢してたのに
濡れた目蓋をごしごしと拭き心配そうに私を見るマターさんに笑顔を向ける

ただただ私を見るじっと見据えるマターさんに笑顔を向ける

「怪我、しないでくださいね」
「……」
「約束ですよ」
「シュリル…」

名前を呼ばれたと同時に大王様の大きな手で頭をグリグリと撫でられる
以外に力強くて頭がぐわんぐわん揺れるが文句は言わない
もしかしたら、最後になってしまうかもしれないから。そんな予感がしていて

「シュリル、もう日が暮れてきた」
「は、い…」
「これ以上暗くなる前に早く帰れ」
「…分かりました」

嫌だ、という言葉を必死に飲み込んで
私は大王様の姿をしたマターさん見つめて名前を呼ぶと
マターさんは柔らかな声音で言葉を連ねた

「マターさん、また…」
「シュリル、また」

また、そういってくれたマターさんの言葉を信じて



2020.05.05 加筆修正

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since,2011.01.01~2020.01.01 / 野箱