あなたの名前を奪いたい
寒い、な。
ふるりと肩を震わせ、私はさらりと吹く風の元を辿った。そして扇風機のスイッチをパチリと消す。たちまち爽やかな風は消え、重たく湿ったような空気がどんよりと漂った。
夏夜に薄いブランケットを羽織り、窓は全開、扇風機も付けっぱなしでいつの間にか寝ていたらしい。枕元にくたりと横たわる文庫本があまりにも哀れで、緩んだカバーをきちんとはめ直した。
まだ日も登らず、月明かりだけが頼りの時間に視界の隅で小さな端末が青く光る。ぽん、と浮かび上がる通知に一瞬反応するが、他愛もない友人からのメッセージだった。
……私が欲しいのはこれじゃない。
力なく持ったスマートフォンの重みにも耐えきれず、ゆらゆらと手首が揺れる。眩しいブルーライトに目を眇めながら私は画面をゆるゆるとスワイプした。
溢れる吹き出し、流れていく呟き、褒められたがりの写真。全部全部どうでもいいや、なんて投げやりな気持ちになりながらも暇を潰すには一番のものに思えてしまって止められなくなっている。
はぁ、と小さくため息を吐いてそんなに世の中楽しいことばかりじゃないよねと考えていた私は、思わずその呟きに指を重ねた。
それはアイドルとしての彼が呟いた言葉であって、新しいCDの宣伝らしい。
憎らしいほどに綺麗に写った彼は目線をチラリとも寄越さずに横顔だけを見せつける。
あぁそんな顔してたんだっけ。
揺れる金髪、眩い黄金色。私の全てを君の色に染め上げては、君自身は私の色なんかに染まってくれやしない。
そろそろその羽手折ってはくれまいか。
……なんて埒もないことを考えては、何度も何度も画面をなぞる。
触れても体温なんて感じられやしないのに。
ふるりと肩を震わせ、私はさらりと吹く風の元を辿った。そして扇風機のスイッチをパチリと消す。たちまち爽やかな風は消え、重たく湿ったような空気がどんよりと漂った。
夏夜に薄いブランケットを羽織り、窓は全開、扇風機も付けっぱなしでいつの間にか寝ていたらしい。枕元にくたりと横たわる文庫本があまりにも哀れで、緩んだカバーをきちんとはめ直した。
まだ日も登らず、月明かりだけが頼りの時間に視界の隅で小さな端末が青く光る。ぽん、と浮かび上がる通知に一瞬反応するが、他愛もない友人からのメッセージだった。
……私が欲しいのはこれじゃない。
力なく持ったスマートフォンの重みにも耐えきれず、ゆらゆらと手首が揺れる。眩しいブルーライトに目を眇めながら私は画面をゆるゆるとスワイプした。
溢れる吹き出し、流れていく呟き、褒められたがりの写真。全部全部どうでもいいや、なんて投げやりな気持ちになりながらも暇を潰すには一番のものに思えてしまって止められなくなっている。
はぁ、と小さくため息を吐いてそんなに世の中楽しいことばかりじゃないよねと考えていた私は、思わずその呟きに指を重ねた。
それはアイドルとしての彼が呟いた言葉であって、新しいCDの宣伝らしい。
憎らしいほどに綺麗に写った彼は目線をチラリとも寄越さずに横顔だけを見せつける。
あぁそんな顔してたんだっけ。
揺れる金髪、眩い黄金色。私の全てを君の色に染め上げては、君自身は私の色なんかに染まってくれやしない。
そろそろその羽手折ってはくれまいか。
……なんて埒もないことを考えては、何度も何度も画面をなぞる。
触れても体温なんて感じられやしないのに。