good night my dearest
冷たい風が窓を揺らし、思わずその冷気に肩をも震わすようなある冬の日。お風呂に入って諸々のケアをし終え、もう後は眠るだけとなった俺は先にベッドで寝ているはずの最愛の人のことを思い浮かべては思わず頬を緩めた。
一度水分補給をしてから眠りにつこう、と考えダイニングに向かうと何故か明かりがついたまま。名前が消し忘れてしまったのかな、と思いながら部屋に足を踏み入れると、なんとそこにいたのはまさかの名前。予期せぬ場所にいた事に驚きつつ辺りを眺める。ダイニングのテーブルに上半身を預けるような形で眠っている彼女の姿は、我らがリーダー兼プロデューサー様の姿と一瞬被って見えた。勿論彼女の周りには大量の楽譜は散らばっていないが、代わりに資格取得のための教材が散乱している。頑張っているのはいいことなんだけどね、と少し苦笑しながら俺は教材類をひとまとめにした。
いつからこうしていたのか、彼女の肩はひんやりと冷たい。起こしてしまうのも忍びなくて、ブランケットを肩にかけるだけにとどめた。
「……お疲れ様」
そう言ってそのまま明かりを消し、部屋を出ていこうと思った瞬間、溶けるようにおぼろな彼女の声が冬の空気を震わせた。
小さく自分の名を呼ぶ声はいつもより少し掠れていて、起きたらはちみつレモンを作ってあげようと考える。まるで小さな子供のように舌っ足らずな声は彼女がまだ眠りの世界にいることを示していた。
「……起こしちゃったね」
のろのろと頭を上げ、こちらを覗く目はまだぼんやりとしている。そのまま何を言うでもなくこちらを見つめ続ける彼女。
「もうベッドに入って寝ちゃった方がいいんじゃないかな」
あんまりにも眠そうな彼女はうつらうつらと船を漕ぎながらも俺の言葉にこっくりと深く頷いた。なんだか彼女の仕草がまるで幼い子供のもののようで愛しさがこんこんと募る。
「ほら。……おいで?」
意識せずとも彼女の前では溶けるように甘い声が自然と零れた。そっと腕を差し出せば、彼女はゆっくりと椅子から下りるようにしてこちらの首に腕を回す。甘えるようにこちらに擦り寄った彼女の体は少し抱きとめるだけでひんやりと冷えていたことが伝わった。
「もう……こんなに冷やして」
ちょっと怒ったように言ってみても彼女はまた微睡みの中、何も聞こえていないのかふにゃりと笑うだけである。仕方ないなぁ……と零した独り言も心なしか声音が甘くなってしまっていた。
首元に腕が回されていることを確かめると、俺は彼女の膝下に腕を差し込み、俗にお姫様抱っこと呼ばれる抱え方で彼女をそっと抱え上げる。そのまま寝室まで連れて行くと、ウトウトしたままの彼女を腰元からゆっくり下ろしてベッドの上に横たえた。ギシリと鳴る音でベッドにいることに気がついたのか、少し反応を見せる彼女。戯れのようにお姫様、と呼びかければ腕にこもる力がそっと弱まった。後は腕を離してもらって、ダイニングの明かりを消しに戻って……と算段を組んでいたのだが何故か一向に彼女が腕を外す気配がない。不思議に思い、思わず首を傾げると、首元の腕は回したままに彼女がゆったりと頭をもたげた。与えられたのは静かな、ほんの一瞬のくちづけ。冷えていた体からは想像出来ないほどの柔らかな熱に少し驚きながらも、その子供のいたずらのような行為に愛しさが湧き上がる。そして彼女はその一瞬で少し満足気な表情になり、そのまま自然に腕を外した。すぐに移るは夢の世界。彼女は瞬く間に優しく穏やかな眠りへと誘われていったのだった。
「……おやすみ、良い夢を。」
一度水分補給をしてから眠りにつこう、と考えダイニングに向かうと何故か明かりがついたまま。名前が消し忘れてしまったのかな、と思いながら部屋に足を踏み入れると、なんとそこにいたのはまさかの名前。予期せぬ場所にいた事に驚きつつ辺りを眺める。ダイニングのテーブルに上半身を預けるような形で眠っている彼女の姿は、我らがリーダー兼プロデューサー様の姿と一瞬被って見えた。勿論彼女の周りには大量の楽譜は散らばっていないが、代わりに資格取得のための教材が散乱している。頑張っているのはいいことなんだけどね、と少し苦笑しながら俺は教材類をひとまとめにした。
いつからこうしていたのか、彼女の肩はひんやりと冷たい。起こしてしまうのも忍びなくて、ブランケットを肩にかけるだけにとどめた。
「……お疲れ様」
そう言ってそのまま明かりを消し、部屋を出ていこうと思った瞬間、溶けるようにおぼろな彼女の声が冬の空気を震わせた。
小さく自分の名を呼ぶ声はいつもより少し掠れていて、起きたらはちみつレモンを作ってあげようと考える。まるで小さな子供のように舌っ足らずな声は彼女がまだ眠りの世界にいることを示していた。
「……起こしちゃったね」
のろのろと頭を上げ、こちらを覗く目はまだぼんやりとしている。そのまま何を言うでもなくこちらを見つめ続ける彼女。
「もうベッドに入って寝ちゃった方がいいんじゃないかな」
あんまりにも眠そうな彼女はうつらうつらと船を漕ぎながらも俺の言葉にこっくりと深く頷いた。なんだか彼女の仕草がまるで幼い子供のもののようで愛しさがこんこんと募る。
「ほら。……おいで?」
意識せずとも彼女の前では溶けるように甘い声が自然と零れた。そっと腕を差し出せば、彼女はゆっくりと椅子から下りるようにしてこちらの首に腕を回す。甘えるようにこちらに擦り寄った彼女の体は少し抱きとめるだけでひんやりと冷えていたことが伝わった。
「もう……こんなに冷やして」
ちょっと怒ったように言ってみても彼女はまた微睡みの中、何も聞こえていないのかふにゃりと笑うだけである。仕方ないなぁ……と零した独り言も心なしか声音が甘くなってしまっていた。
首元に腕が回されていることを確かめると、俺は彼女の膝下に腕を差し込み、俗にお姫様抱っこと呼ばれる抱え方で彼女をそっと抱え上げる。そのまま寝室まで連れて行くと、ウトウトしたままの彼女を腰元からゆっくり下ろしてベッドの上に横たえた。ギシリと鳴る音でベッドにいることに気がついたのか、少し反応を見せる彼女。戯れのようにお姫様、と呼びかければ腕にこもる力がそっと弱まった。後は腕を離してもらって、ダイニングの明かりを消しに戻って……と算段を組んでいたのだが何故か一向に彼女が腕を外す気配がない。不思議に思い、思わず首を傾げると、首元の腕は回したままに彼女がゆったりと頭をもたげた。与えられたのは静かな、ほんの一瞬のくちづけ。冷えていた体からは想像出来ないほどの柔らかな熱に少し驚きながらも、その子供のいたずらのような行為に愛しさが湧き上がる。そして彼女はその一瞬で少し満足気な表情になり、そのまま自然に腕を外した。すぐに移るは夢の世界。彼女は瞬く間に優しく穏やかな眠りへと誘われていったのだった。
「……おやすみ、良い夢を。」