二人で歩く帰り道、月の光に照らされて伸びた影が夜の闇に溶け込んでいく。車の通りも少ないこの道で響くのは二人分の足音とリズムよく飛び交う互いの言葉たち。

「今日はストロベリームーンなんだって」

どこか弾んだ声音で彼女はそういうと、楽しそうに空を見上げた。
真っ暗な天蓋にぽっかりと穴が空いたようにすら見える、眩い光を放つ真ん丸な満月。いつもならもっと静かなイメージがある月の光は、今日は光が目に刺さるほど強く感じられる。

「月が綺麗だね」

彼女の唇から零れたのは、一見なんでもないありふれた言葉。果たして彼女はその意味を知っているのか、いないのか。

ほんの少しどぎまぎしながら月光に照らされる彼女の横顔をチラリと覗き見る。
しかしその表情はいつもと変わらないもの。残念なことに期待したようなことは起こっていないようだ。

勝手にガックリと肩を落としながら、どこか重く感じる足を引きずるようにして帰路を歩む。
すると彼女はふと立ち止まり、月を閉じ込めようとするかのように手を空に掲げた。

「そういえばこの月、恋が叶うんだって」
この月がなくても叶っちゃったね。

向けられた悪戯っぽい微笑み。
その瞬間、してやられた、という気持ちになった。

頭を掻きむしりたくなる手をどうにかとどめて、ぷらりと下ろされたその手を掬いとる。
好きだという想いだけが伝わるように、握った掌にほんの少し力を込めてやったのだった。