伸ばした指先
髪の毛に触りたい。
目の前で揺れるラズベリー色にいたく好奇心がくすぐられ、ふつふつと湧いた小さな衝動と欲望。
何やら書類片手に難しそうな顔をしている彼の背中はがら空きだ。狙うなら今だよ、と言わんばかりの隙だらけの姿。そうっと忍び寄って、手を伸ばして、あと一歩……!
息をひそめて足音も立てぬようにその一歩を踏み出せば、ふわり。伸ばした指先に触れた、ラズベリーのような甘やかな髪の毛。
あ、意外とふわふわしてるんだ。
なんて子供みたいな感想を浮かべた次の瞬間。振り向きざまにパチリと見開かれたエメラルドの瞳と視線がかち合った。
途端訪れる静寂。急な冬が来たかのように辺りから音は消え、時計の針はたちまち凍りついたように動かなくなった。
……おこ、られる?
珍しく黙ったまま、その綺麗なかんばせに表情のひとつすら浮かべずにいるのだからこちらはたまったものでは無い。集中していたのを邪魔してしまったのだから怒られてしまってもおかしくはないけど、でも、でも。
子供じみた言い訳をどうにか零さぬように唇をかみ、少し怯えた心で祈るように彼の言葉を待つ。
不意に、凍った時計の針が暖められ、ゆるりと動き出す。彼はそのうつくしいエメラルドをいたずらに細めて、軽やかに笑った。
「なーにしてんだよ。ほら、かまって欲しいならちゃんと口で言え〜?」
揶揄うような口上で告げる声に潜んでいるのは小さな悪戯心だけ。そこに怒りのようなものは見当たらず、思わずホッと息を吐く。
なんとなく触ってみたかっただけ。なんて言おうと思っていたけれど、言い訳するのはやめにしてちょっぴり素直になってしまおうか。
珍しいきみの姿を見たのだから、私だって珍しく素直になってみてもいいかもしれない。たまにはそっちが驚けばいいんだ。
悪戯心で近寄って、耳元に落としたメッセージ。
「……そうだよ、かまって欲しかったの」
目の前で揺れるラズベリー色にいたく好奇心がくすぐられ、ふつふつと湧いた小さな衝動と欲望。
何やら書類片手に難しそうな顔をしている彼の背中はがら空きだ。狙うなら今だよ、と言わんばかりの隙だらけの姿。そうっと忍び寄って、手を伸ばして、あと一歩……!
息をひそめて足音も立てぬようにその一歩を踏み出せば、ふわり。伸ばした指先に触れた、ラズベリーのような甘やかな髪の毛。
あ、意外とふわふわしてるんだ。
なんて子供みたいな感想を浮かべた次の瞬間。振り向きざまにパチリと見開かれたエメラルドの瞳と視線がかち合った。
途端訪れる静寂。急な冬が来たかのように辺りから音は消え、時計の針はたちまち凍りついたように動かなくなった。
……おこ、られる?
珍しく黙ったまま、その綺麗なかんばせに表情のひとつすら浮かべずにいるのだからこちらはたまったものでは無い。集中していたのを邪魔してしまったのだから怒られてしまってもおかしくはないけど、でも、でも。
子供じみた言い訳をどうにか零さぬように唇をかみ、少し怯えた心で祈るように彼の言葉を待つ。
不意に、凍った時計の針が暖められ、ゆるりと動き出す。彼はそのうつくしいエメラルドをいたずらに細めて、軽やかに笑った。
「なーにしてんだよ。ほら、かまって欲しいならちゃんと口で言え〜?」
揶揄うような口上で告げる声に潜んでいるのは小さな悪戯心だけ。そこに怒りのようなものは見当たらず、思わずホッと息を吐く。
なんとなく触ってみたかっただけ。なんて言おうと思っていたけれど、言い訳するのはやめにしてちょっぴり素直になってしまおうか。
珍しいきみの姿を見たのだから、私だって珍しく素直になってみてもいいかもしれない。たまにはそっちが驚けばいいんだ。
悪戯心で近寄って、耳元に落としたメッセージ。
「……そうだよ、かまって欲しかったの」