「……こら」

口元を手のひらで覆うと、目の前のエメラルドをじぃと睨みつける。こちらに顔を寄せようとしていた彼は、大変不満げに眉を吊り上げながら、声を出さずに「なんで」と囁いた。

「……ダメって言ったらダメです。」

合わせた視線を外せば何かが起きてしまいそうで、私はただひたすらに彼の目を見つめ続ける。
ドクンドクン。煩いほどに鳴り響く心音が彼にまで聴こえていないか不安になる。いっそ掻き消すことができればいいのに。
小さな祈りは叶うことなく、ただ無慈悲に時が流れるだけ。
すると不意に目の前の煌めきが消えた。そっと彼が瞼を閉じたのだ。

どうしたんだろう。口元を手で覆ったまま、そっと彼の方に顔を近づけた次の瞬間、ぐいと彼が顔を寄せた。そして私が口元を覆った手の指先をかぷりと食む。それは言わば甘噛みのような、それでいて少しこちらを詰るようなものだった。
思わずひぇ、と声にならない情けない音が漏れる。すると彼は瞳の奥の獣を隠すことなくギラついた視線を向けると、指先をチロリと舌で舐めた。
驚いてパッと口元から手を離すと、彼はニンマリと口角を上げる。

「……いただきます」