再会
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「一昨日の夜です」
「なんだ急に」
「怖い話です。心して聞いて下さい」
「久々に再会した相手に世間話かっ飛ばしていきなりそんな話を?」
「その返し、本当に降谷先輩なんですね」
「疑ってたのか」
「前に会ったのいつだと思ってます?5年前ですよ?なんの連絡もなしにいきなりバーに現れてW久しぶりWなんて言われた私の心境わかります?驚き通り越して詐欺かと思いましたよ」
「相変わらず元気そうで安心したよ」
「どうせ、W何してるんですか?Wなんて訊いてもはぐらかすんですから私の暇つぶしに付き合ってください」
「なんで僕が君の暇つぶしに付き合わなきゃいけない」
「先輩久々に会ったのにつめたーい」
「まぁ、いい。聞いてやる」
「ありがとうございます。で、一昨日の夜、彼氏の家に行ったんですけど」
「待て」
「なんですか」
「君、彼氏いたのか」
「いました。正確にはW元Wですけど…」
「続けて」
「はい。で、家で映画観た後はそれなりにいちゃいちゃして?」
「待て待て待て」
「なんですか」
「忘れかけてたが怖い話なんだよな?お前の惚気や聞きたくもない色事の話を聞かされるんじゃないよな?」
「違います!ちゃんと後輩の話を最後まで聞いてください。そういうとこよくないです」
「悪い、反省しよう。続けて」
「はい。それで、問題はそのあとです」
「…いちゃいちゃの?」
「はい、いちゃいちゃの。こう、甘い感じでベッドに寝かされた時にですね?何か手に布切れのような物が引っかかって…」
「・・・・」
「暗くてよくわからなかったんですけど、急に女の勘が働いて被さるそいつを跳ね除けて電気を点けたわけです」
「・・・・」
「そしたら明らかに私のじゃない派手な、スケスケの下着だったんですよ!スケスケがまたムカつく!問い詰めたらなんて言ったと思います⁉君へのプレゼントに買ったんだって!馬鹿なの⁉明らかに新品じゃないし!それでそのパンツをそいつに被せて、」
「まさかそれで首を締めたんじゃないだろうな」
「はい」
「おい、お前っ」
「安心してください。頭に被せたところでこいつのために手を汚すのも釈だと思ったのでフライパンで殴って帰りました」
「そいつ、生きてるよな?」
「生きてます。殴ったのは顔面すれすれの壁なんで」
「明らかな器物破損だが、君が殺人を犯さなくて心底ホッとしている」
「当たり前です。殺したかったけど」
「彼から連絡は?」
「したら殺すって言って出てきたんで」
「そうか…」
「女物のパンツ被って放心している姿は見ものでした。思わず写メ撮るぐらいに。あっ、見ます?」
「見ないよ、馬鹿か。早く消せ」
「はーーー…、浮気されたのもショックですけど、一番ショックなのは選ばれなかった自分にですよ…」
「そんな男にでも?」
「そんな男を見抜けなかったのも、浮気されたのも自分にそれ以上の魅力がなかったからです。100:0 で向こうが悪いけど」
「過失の割合は50:50 とか言う口癖の人間に会ったら近づくなよ」
「そんな人いるんですか?」
「いるんだ」
「はぁ…」
「落ち込むな。そんな男のために君の時間を使うのは勿体ない。それに君の魅力は僕が一番わかってるよ」
「…どんなところです?」
「僕がまだ学生で生徒会長だったとき…」
「そんなところまで遡らないと出てこない?」
「まぁ、最後まで聞け。君の悪いところだぞ」
「反省します。続けてください」
「書記の君にいろいろな仕事を振っても君はきちんと仕事を熟したな」
「はい。くそ大変でしたけど。今の降谷先輩が部下に同じことさせてると思うと同情します。なんの仕事してるか知りませんけど」
「普段はそうやって憎まれ口叩くのに、僕と連絡がつかなくなっただけで、涙目になって家まで来たな。どんな妄想までしたのかはわからないが、W死んだと思ったWなんてわけのわからないこと言って」
「あれは!諸伏先輩がW降谷、家で倒れてるかもなぁWなんていうから!」
「ただの風邪だ」
「でもしんどかったのは本当だったじゃないですか!」
「君のまずい粥もいい思い出だ」
「今も飯はまずいと評判です」
「残念だな」
「残念です」
それに降谷は声を出して笑った。
「君は、ずっと変わらないな」
「変わっていて欲しかったんですか?というか学生のままなんですか、私。今年28になるんですけど、綺麗になったとかちょっとや思いません?」
「あぁ、綺麗になった」
「…な、なんですかっ、急に!調子狂うな」
「引く手数多だろう」
「そこまで言われると逆に嘘っぽいです。悲しいことに、あの頃と同じで仕事が出来るのは顕在な為、男たちからは煙たがれて婚期は遅れるばかりですよ。よかったですね」
「出来ればもう少し婚期を遅らせて欲しい」
「嫌がらせですか。全然私の幸せ願ってないですよね、それ」
「あと、何年か待っていてくれれば、僕が君を迎えにいく」
「………嘘だっ、騙されません」
「一度男に騙されたんだ。一度や二度変わらないだろう」
「変わるよっ…馬鹿なんですか?」
「そんな泣き顔で言われてもな」
「先輩は…すぐいなくなるもん」
「…名前」
「すぐ、私を置いて行っちゃう…」
「僕のこと好きだもんな、君は」
「自惚れないでください。言ってて恥ずかしくないんですか」
「実は少し恥ずかしい」
「そんなカッコいい顔で言っても信憑性ゼロです」
「返事は?」
「……仕方ないから、待っててあげます」
「なら、今から指輪ぐらい買いに行くか」
「やばい、詐欺の臭いしかしない」
「安心しろ。流石に僕が出す」
「あとで多額の請求書が送られてきたり、何かの誓約書書かされたり」
「君は本当、昔からそうだな」
「先輩も相変わらずで安心しました」
「君の前だけさ」
「先輩は昔から私のこと大好きですもんね」
「…それは君も、だろ?」
笑って彼女の手を握る。
今は約束を形に残すことしか出来ないけど、いつか絶対迎えにいくから、もう腹いせに彼氏なんて作らないで欲しい。
そんなことを言ったら彼女はバレてましたか、なんて涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で笑った。
終わり
2020.06.09.
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