「リヴァイ兵長、失礼します」

「何だ」

「エルヴィン団長から書類預かってきました。すぐに目を通して確認のサインをして欲しいそうです」

「…俺は今休憩中だ」

「すぐに、目を通して欲しいそうです」

「チッ…座れ」

「失礼します」


リヴァイに書類を手渡し促されるままソファに腰掛ける。すると何故かリヴァイが立ち上がり戸棚の方へ歩いたかと思えばティーカップをもうひとセット持って戻ってきた。


「私のことはお構いなく」

「いいから付き合え」

「…」

「…何だ」

「いえ、ありがたく頂戴します」


カップに注がれた琥珀色の液体を眺めナマエは少しだけ表情をゆるめた。書類はなかなかの厚さですぐには読み終わらないだろう。差し出された紅茶はそれを待っているナマエへの気遣いだ。こういうところが慕われるのだな、とナマエはひとり納得しながら紅茶を口に運ぶ。


「…美味いか」

「え?…あ、はい、とても」

「ならそう言え」

「すみません。書類を読んでいるのでお邪魔になるかと」

「会話くらい出来る」

「ふふ…器用でいらっしゃるんですね」

「これくらい誰でも出来る」

「そうですか?ハンジさんなんか一つのことに集中すると周りが見えていないときがありますよ」

「あれと一緒にするな」

「ふふ…」


ぱら、と紙を捲る音が耳に届く。その音に呼ばれるように視線を向ければその先に居るリヴァイと目があった。


「おかわりか」

「いえ、…読むの早いですね」

「…………」

「…す、すみません…」


視線を戻し中身が半分ほどになったカップを見つめる。リヴァイはしばらく無言のままだったが何を思ったか手に持っていた書類を閉じて紅茶に手を伸ばした。そして彼独特の持ち方でカップを持ち上げ器用にもそのままの口元に持っていく。


「あの…書類、」

「これを飲んだら読む」

「え…」

「お前もゆっくりしていけ」

「そ、そんなわけには…団長に怒られてしまいます」

「俺が無理強いしたとでも言えばいい」


リヴァイがそう言ってもナマエはきっと自分のせいにしてエルヴィンに頭を下げるのだろう。エルヴィンもそんなことで怒るような男ではないが、彼女の真面目さをからかい良からぬ悪戯をしないとも限らない。大体自分の直属の部下でもないナマエをわざわざリヴァイの部屋に寄越したのも彼がナマエに抱く、まだ本人すら自覚しきれていなかった想いにいち早く感づいたからだ。どこまでも聡い男だと内心舌を打ちながらリヴァイは眉間に皺を寄せ紅茶を啜る。


「なぁ、ナマエよ」

「はい」

「俺と紅茶を飲むのは嫌か」

「えっ…いえ、そんな……とても光栄と言うか、嬉しいです」

「…そうか。俺もだ」

「え…?」


リヴァイはそれきり黙ってしまいナマエはひとり小首を傾げる。リヴァイはその様子を眺めふと笑みをこぼすと残り少ない紅茶を一気に喉に流し込んだ。もう一杯飲むと言ったら、彼女は今度こそ怒ってしまうだろうか。