(ゲスヴィン?)
ナマエが訓練兵団に入団した頃、エルヴィンはまだ分隊長だった。彼は度々訓練地にやって来ては優秀な者に声をかけ調査兵団へ勧誘していたが、ナマエは卒業するまでついぞ声をかけられることはなかった。いつも遠くから声をかけられる同期を羨ましく思いながら眺め、どうしたらエルヴィンと話すことが出来るのか必死に考えた。ナマエはいつしかエルヴィンに憧れ、またそれ以上の感情も胸に抱いていたのだ。結局エルヴィンと今まで何の接点もないナマエが彼に近づくために出来ることと言えば調査兵団に入ることくらいしかなかったが、入団式を終えて少し経ったある日、ついにその日がやってくる。
「エルヴィン分隊長、お疲れ様です!」
「お疲れ様」
「あの…次の団長就任が決まったと聞きました。おめでとうございます」
「ありがとう。君は…、」
「ナマエ・ミョウジです!わ…私、どこまでも貴方に着いていきます!」
顔を真っ赤にしながら必死で激励してくれる部下を見て、エルヴィンはふと口許をゆるめた。ちらりとこちらを伺う大きな瞳には緊張からか涙の膜がはっている。
「………ナマエ、君は私が好きか?」
「ぇえっ!?あ、…えっ、………あの、」
「ん?」
「、好き……です」
「…私のためなら何でも出来るか?」
「わ、私に出来ることならば…」
「そうか……なら、」
エルヴィンはナマエの肩に手を置くと耳元に顔を寄せた。びくりと震えるナマエを押さえつけるように手に力をいれると耳に触れるか触れないかのところで口を開く。
「ナマエ、今日から君は…私の犬だ」
ナマエは自分の耳を疑った。決して期待していたわけではない。しかし実際耳に届いたものは来るだろうと思っていたどの言葉とも違うものだった。
「い、犬…ですか」
「あぁ」
「では…私は、何を……?」
「そうだな…では手始めにわん、と鳴いてごらん」
「………わ、わん」
「うん、良い子だ」
エルヴィンの大きな手がナマエの頭を撫でる。それが離れるとエルヴィンは自分が持っていた資料の束をナマエの腕に持たせついてくるように言った。言われた通りついていくと彼の執務室に着いたのだが、何故か部屋には入れてもらえず扉の前で待たされる。しばらくして出てきたエルヴィンはナマエが言いつけ通りにじっと待っていたのを見てにこやかに微笑んだ。
「ナマエ、君には犬の才能があるな」
「は、……そうでしょうか」
「私はそう思うよ…しかし間違っても他のものに尻尾を振ってはいけないよ。私にだけ従順でありなさい。いいね?」
「(尻尾…)は、はい…」
「よろしい。では、また用があれば呼ぶから、それまでは自分のやるべきことをしなさい。それと、君と私の関係は他言無用だ。誰かに話したら…その時はきついお仕置きが待っているから覚悟しておくように」
「……はい…」
「それともうひとつ」
エルヴィンはナマエの両肩に手を置くと少しかがんで頬にキスを落とした。
「………え、」
「きちんと"待て"が出来たご褒美だ」
エルヴィンは耳元でそう囁くとひらりと手を振って部屋に入っていった。ばたん、と扉の閉まる音ではっと我に返ったナマエはまだ柔らかな感触が残る頬に手を当てその場にへたり込む。つい5分ほど前まで話したことすらなかったエルヴィンにキスまで(頬にだが)された現実を受け止めるまで、まだしばらく時間がかかりそうだ。
ゲスヴィンを1回書いてみたかったけど、何かよくわからなくなった。
ゲスいってどんな感じだ…。
一応愛はあります。
気が向いたらシリーズ化するかも。
title by滓