「そろそろ身を固めようかと思うんだ」
紳士的な笑みを浮かべながらエルヴィンははっきりと言い放った。一瞬驚きはしたもののナマエは見開いた目をすぐに伏せて声を絞り出す。
「それは、…おめでとうございます」
「ありがとう」
出された紅茶を啜って乾いた喉を潤した。ナマエはエルヴィンにそんな人が居たとは知らなかったのだ。側近のように仕事をさせてもらって、時にはプライベートに踏み込むことも許してもらえていた。それなりに信用して貰えていると思っていたのだが、どうやらナマエの思い上がりだったらしい。
「しかしね、少し困っているんだ」
「…と、仰いますと?」
「実は、相手の気持ちがはっきりしなくてね」
「え…、それなのに、結婚なさるのですか?」
「あぁ。私は彼女が良いんだ」
「(そんなに…、)」
エルヴィンは余程その彼女のことが好きらしい。いいな、とナマエは思う。他でもないエルヴィンに、自分もそこまで愛されてみたかったと切に思う。
「何度か体を重ねたことはあるんだが、どうも恥ずかしがりやらしくてね…はっきり言葉にしてくれないんだ」
「そう、なんですか…」
「困った子だろう?そこが可愛いんだが」
「………」
そんな、幸せそうに笑わないでほしい。ナマエがエルヴィンを上司以上に思っていることはとっくに気付いているだろうに。本当に、酷い男だ。
「…私が、聞いてきましょうか。団長をどう思っているか」
「…出来るかい?」
「えぇ、聞くだけでしたら。その方のお名前を教えていただけますか」
「ナマエ」
「はい」
「………」
「………」
「………」
「……団長?」
「ん?」
「あの、お名前を…」
「さっき言っただろう?」
「え…、でも………え!?」
面白いほどに赤く染まるナマエの顔を見てエルヴィンは声をあげて笑う。ジャケットの内ポケットから小さな箱を取り出し蓋を開けるとナマエの方へそっと差し出した。
「ナマエ、私と結婚してくれるか」