リヴァイは冬になるといつも決まった場所でよく空を見上げていた。それは今にも雪が降りだしそうなどんよりとした空で、決まってその少し後にやはり雪が降り始める。
「リヴァイ兵長、またこちらにいらしたんですね」
「…何か用か」
「いくら人類最強でも風邪引いちゃいますよ。上着どうぞ」
「てめぇ俺の部屋に勝手に入ったのか」
「まさか。いくら私でもそんな(恐ろしい)事しません。これはさっきエルヴィン団長に渡すように頼まれた新品です。先日シーナに行った際に盛大に泥が跳ねたそうですね」
「そうか…悪かったな」
「いえ。これくらい何でもありません」
「そうじゃねぇよ」
「は、…では何でしょう」
「…わからねぇならいい」
「…そうですか」
糊のきいたコートを広げ腕を通すリヴァイをナマエはじっと見つめる。少し赤くなった鼻をすすりコートの合わせを抱えるように重ねる様子は普段とは少し違うように見えて思わず数回瞬いた。
「…何だ」
「いえ…ちょっと、兵長が可愛く見えただけです」
「あ?」
「一瞬ですよ、一瞬。普段は思ってませんから」
「てめぇどういう意味だ」
「え…どこに怒ってるんですか兵長。可愛く思われたいんですか」
「違う…もういい。てめぇと話すと疲れる」
「すみません…では、私はこれで失礼します」
敬礼をしてさっさとその場を去ろうとするナマエに視線だけ向けながらリヴァイはかじかむ手をポケットに突っ込んだ。すると指の先に何かが当たったような気がしてそれを掴み引き上げる。
「おい待て」
「…はい」
「この箱は何だ」
拳ひとつ分程のその箱は綺麗にラッピングされリボンがかけられていた。リヴァイが声をかけるとナマエはゆっくり振り返り何となくばつの悪そうな顔をしてひとつ咳払いをした。
「その……、プレゼント…です」
「プレゼントだと?俺にか?」
「はい。エルヴィン団長から、もうすぐ誕生日だと伺いました」
「…そうか」
リボンを解いて箱を開けると中には一見ガラス玉のようなものが入っていた。取り出してみればそれはスノードームで、持ち上げた拍子にその小さな世界に雪が降る。
「雪が…お好きなのかと思って。それならいつでも雪が降るのを見られるかな、と」
「……」
「…お、お気に召さなければどうぞ捨ててください」
「いや…悪くねぇ。すまねぇな、気を使わせて」
「いいえ…こちらこそ、すみません。押し付けてしまって」
何となく直接渡す勇気が出なくてコートのポケットに入れるなんて姑息な真似をしてしまったが、一応喜んでもらえたようでナマエはホッと胸をなでおろす。ちらりと視線を上げればリヴァイはドームを揺らしてその様子を熱心に見つめていた。
「…地下には雪が降らねぇんだ」
「……え?」
「まぁ地下だからな。そもそも空がねぇって話だ」
「はぁ…」
「だからな、そりゃあ憧れたもんだ。空から降る水や塵のような物にさえな」
「……兵長って…意外とロマンチストなんですね」
「あ?」
「あぁいえ、別に馬鹿にしてるとかではないですよ。えっと…じゃあ、来年はバケツいっぱいに雨水溜めときますね」
「……」
「じょ、冗談ですそんな怖い顔しないでください」
お決まりのように削ぐぞと脅されて、ナマエは思わず破顔した。その少し後につられる様に口元をゆるめたリヴァイの顔をナマエはずっと忘れられない。