目が覚めると独特の薬のようなにおいが鼻をくすぐりここが医務室なのだとすぐにわかった。少しだけ開いた窓から風が入りカーテンを揺らす。


「ナマエさん、?」

「…ジャン・キルシュタイン。何故ここに」

「俺が、ここに運びました。その…本当に、」

「謝罪ならもう聞いたよ。二度と同じことをしなければそれでいい」


今にも泣きそうな彼を安心させるように少し微笑んでやると今度は顔を赤らめて俯いた。忙しい男だな、と思うとドアをノックされ何故かジャンが勢いよく返事をする。扉をあけて入ってきたのはエルヴィンで、うわ、と思うナマエとは反対にジャンは顔を青くして姿勢を正すと敬礼をする。


「君が運んでくれたんだってね。ありがとう」

「いえ!怪我をさせたのも自分なので当然です!」

「そうか…もういいから、君は戻りなさい」

「はっ!失礼します!」


ジャンはちらりとナマエを見ると早足で医務室を去っていった。ベッドの横にあるさっきまでジャンが座っていたそれに腰掛けるとエルヴィンはふう、とため息を吐く。


「折れてはいないそうだ。2週間は安静だがな」

「そう…」

「君には失望した」

「……」


だから私に教官なんて無理だって言ったのに。心の中で愚痴りながらふいと顔を背ける。直接的な原因ではなくとも結果怪我をしてしまったのだから文句は言えない。しかしナマエはエルヴィンが自分の思った以上に怒っていることに驚いていた。それと同時にとても怖いと思った。


「ナマエに任せたのは間違いだった」

「っ…もう、いいでしょ。詳しいことはあとで報告書を、」

「後悔しているよ。あんな子供が、君に触れるのを許すなんて」

「は?…え、エルヴィン?」


ぎ、と軋んだベッドの音に振り向くとエルヴィンが手をついてナマエに覆い被さろうとしていた。ちょっと、と近づく胸を押そうとするが肩が痛んでびくりと体が揺れる。


「その顔を見せたのか?あいつに…」

「え?…何、言ってるの…?」

「部屋に入ったとき、あいつは顔を赤らめていたな。何をしていた?」

「何もしてないってば…!」


痛む肩をぐっと掴まれて冷や汗が滲む。痛い。絞り出すように言ったその言葉はエルヴィンに届いただろうに、彼は知らぬふりを貫き肩をつかむ手に力を込めた。


「ッ…ぅ、…エルヴィン、」

「君があいつに抱かれて戻ってきたのを見たとき、俺がどんな気持ちだったかわかるか?」

「、…ご、ごめ…なさ…っ!」


不意に力がゆるみ詰まる息を吐き出した。涙を浮かべながらエルヴィンを睨むと誤魔化すようにキスされる。ほだされてたまるかと思うが蕩けるようなそれに早くも抵抗する意思をなくしたナマエはされるがままになっていた。


「ん、…はぁっ…エル、ヴィン」

「ナマエ…君のこんな顔、俺以外には見せないでくれ」

「見せない…見せないから、もっと、してよ」


ねだるように見つめるとエルヴィンはふっと笑みを浮かべてキスを落とす。そして耳元で小さく謝った。痛かっただろう。そう言って優しく抱き締めるから、ナマエは結局何をされてもこの男を許してしまうのだ。