「可愛らしい子じゃない」
それに面白いし。そう続けたハンジの視線の先ではリヴァイが不機嫌そうに紅茶を啜っていた。
ナマエが団長室を出たのは数分前。リヴァイに蹴り上げられ床に突っ伏していたハンジが復活するとすぐに彼女の話題を出す。ミケは先程から無言を貫いているが彼は元々口数が少ないので誰も気にはしなかった。しかし否定はしないのでナマエに対する印象はハンジ同様にそれほど悪くはないのだろう。
「それでさ、エルヴィンはあの子のどこを好きになっちゃったわけ?」
「おいやめろ。こいつの色恋についてなんざ聞きたくねぇ」
「…俺は気になるが」
「私も気になるね!だってエルヴィンがこうやって私達に見せるなんて今まで無かったし」
エルヴィンは表立っての恋人こそ今まで居なかったがそれなりに女性との付き合いはあった。しかしただの一度も親しい彼らに紹介したことすらなかったのだ。しかも相手は一般兵。ハンジやミケはもちろんエルヴィンとは殆ど接点のないはずのナマエがどうやって彼の心臓を射止めたのか、非常に気になるところだ。
「残念ながら出会いもこんな関係になった経緯もただの偶然だよ」
「ぇえ?じゃああの子…ナマエだっけ?別に好きじゃないんだ?」
「好きかどうかはまだなんとも言えないが、興味深い対象ではあるな」
エルヴィンは見目が整っていることやその権力故に今まで会ってきた女性の殆どが彼に嫌われまいと媚を売ったり時には大胆に誘惑してくるのをその目で見てきたのだ(もちろん例外は居る)。だからこそナマエのエルヴィンに対する態度がとても新鮮だった。同時にとても好ましいと思ったのだ。
彼女とは今の関係になった時と同じように資料室で眠っていたのをたまたま見かけた事がすべての始まりなのだが、それはまた別の話だ。
「それなのに俺たちに紹介したのか?」
「まぁ遅かれ早かれ噂になるだろうとは思ったからな」
「どうでもいいが俺を面倒事に巻き込むんじゃねぇ」
「またまたぁ…一人だけ教えてもらえなかったらそれはそれで拗ねちゃうんでしょ?」
「近寄るなくそ眼鏡…アホが移るだろうが」
嫌そうに顔を歪めるリヴァイにハンジはわざとらしく傷ついたような素振りを見せるがリヴァイどころか誰一人相手にしなかった。ところで、と先程とは打って変わって真剣な顔をしたエルヴィンは四人を集めた本来の目的である仕事の話をし始める。待ってましたと言わんばかりに身を乗り出したハンジを始め、それぞれがすぐさま思考を切り替えたのだった。