仕事が一段落しエルヴィンは目頭を押さえて体を伸ばす。随分前に空になったカップを持ち上げコーヒーでもと立ち上がろうとするとタイミングが良いのか悪いのかノックが聞こえて反射的に返事をした。
「失礼します」
「ナマエ…どうした?」
「書類を持ってきました。サインをお願いしたいのですが」
「あぁ、いいよ。すぐにサインをしよう。ちょうど一段落ついたところだ」
「それは…申し訳ありません」
休憩の邪魔をしてしまって、と続けるナマエに気にしないように言いながら書類を受けとるとエルヴィンは慣れた様子でサインをしていく。その様子をじっと見ていたナマエはすぐ隣においてあるカップが目についた。
「コーヒー…お淹れしましょうか」
「…良いのか?」
「はい。私でよければ」
「是非頼むよ」
ナマエは一旦部屋を出て食堂でお湯を貰うと再び戻り受け取ったカップにコーヒーを淹れる。以前ここでリヴァイが紅茶を飲んでいたな、と何となく見回すと彼用のものなのか高級そうな茶葉が置いてあった。
「リヴァイ兵長は…紅茶がお好きなのですか?」
何気なく放たれた言葉にエルヴィンの眉がピクリと動く。手を止めて顔をあげるとナマエはリヴァイがこの部屋に置いていった紅茶の茶葉を興味深そうに見つめていた。エルヴィンはペンを置き立ち上がるとコーヒーを淹れているナマエにそっと近づく。
「気になるのか」
「え?」
「リヴァイのことが気になるのか?」
エルヴィンはナマエのすぐ後ろに立つとさらりとした銀の髪を指で撫でる。はっとして振り返るナマエの頬に軽く手を触れると透き通る様なペリドットの瞳が少しだけ見開かれた。
「気に、なるというか…先日お会いした際に失礼な態度をとってしまった様なので何かお詫びをと思いまして」
「…そうか」
「…何かお気に障りましたか」
「いや、気になる者が出来たら言いなさい。すぐに関係を解消しよう」
「わかりました」
エルヴィンの言葉を命令かなにかと思ったのか敬礼をするナマエに思わず苦笑する。不思議そうな顔をする彼女の頭をぽんと撫でると淹れたばかりのコーヒーを受け取りエルヴィンはまたデスクへと向かった。