上着をポールハンガーにかけてため息をつく。無駄に長くなった上のものたちとの会議をやっと終え椅子に深く腰かけるとエルヴィンは俯き手のひらで目を覆った。途端に襲ってくる眠気にその身を委ねようとするがふと思い直す。胸元のポケットから時計を出し時間を確認すると昼休みはとっくに過ぎていた。空腹も感じないことはないがそれよりも少し仮眠をとることを選んだエルヴィンは席を立つと私室へと続く扉に手をかける。


「……これは」


視線の端に何か写った気がして振り返るとソファに不自然な盛り上がりが出来ている。近づくとそれは規則的に小さく上下していて毛布をめくれば案の定、ナマエがすやすやと寝息をたてていた。自由に使ってもいいとは言ったが本当に来るとは思わなかった。エルヴィンは思わず吹き出しそうになるのを口元を手で押さえることで耐える。エルヴィンが会議で不在な時を狙ったのだろうが起きたあと鉢合わせするとは考えなかったのか。それとも会議が終わる前にここを出るつもりだったのか。どちらにせよエルヴィンは会議から戻り、眠っているナマエを見つめているのが現状である。


「ナマエ…君は……」


頬にかかる髪の毛をさらりと撫でる。ぴくりと目元が動いたがそれだけで、少し体勢を変えるとまたすぐに寝息をたて始めた。ナマエをソファに寝せたまま自分がベッドに寝るのは気が引ける。エルヴィンはそっと彼女を抱き上げるとベッドに寝かせ自分は先ほどまでナマエが寝ていたソファに横になった。微かに残ったナマエの温もりがエルヴィンを夢の世界に誘う。重たくなる瞼をそのまま閉じるとゆっくりと意識を手放した。



仮眠のつもりが思いの外ぐっすり眠ってしまったようだ。時計を閉じながらぼんやりする頭でエルヴィンは部屋を見回す。ベッドに目をやるとそこはもぬけの殻で、代わりにナマエが使っていたはずの毛布がエルヴィンに掛けられていた。あとで返さねば、と思うがテーブルに置かれたメモを見てふと笑みをこぼす。


『お疲れ様です。ベッドに運んで下さってありがとうございました。でも、次からは運ばなくて大丈夫です。団長がベッドを使ってください。

毛布はまた使うのでここに置いておいてもらえると助かります。

ナマエ』


几帳面な字で書かれた彼女らしい簡潔な文のそれにエルヴィンは苦笑しながら立ち上がる。服の皺を伸ばし乱れた髪を整えると執務室に戻り何時もより幾らか軽いからだで仕事に取りかかった。