いつもの如くエルヴィンに書類を届け部屋を出ようと背を向けたところで呼び止められる。振り返ればエルヴィンは立ち上がり話があるからとナマエをソファに促した。言われた通りに柔らかなそれに腰を下ろせば目の前のローテーブルに暖かなコーヒーが差し出される。
「三日後の夜なんだが、予定は空いているか?」
「……はい」
「実はその日、内地で開かれるパーティーに出席することになっていてね。どこから聞きつけたのか恋人が居るなら連れてこいと言うんだ」
エルヴィンは胸の内ポケットから招待状を出すとナマエに向けてテーブルに置いた。そこには確かにそれらしい文面が見受けられる。
「…パーティーとは具体的に何をするのですか」
「要は資金集めだよ。より多くのパトロンを見つけるためのパーティーだ…私にとってはね」
「なるほど…」
「パーティーでは私について挨拶するだけでいいし、次の日はお礼に内地の店で好きなものを買ってあげよう」
「…次の日?」
「パーティーが終わるのは深夜になることが多いからいつも宿をとって次の日の朝帰るんだ。もちろん君の部屋もとってある。どうかな…一緒に参加してくれるかい?」
「…」
宿まで取っておいて今更それを聞くのか。ここで行かないと言えるものがいるなら連れてきて欲しいものだ。にこりと笑みを崩さぬままのエルヴィンにナマエはたっぷり間をおいてから小さく行きますと答えた。
「あの…パーティーと言うことは正装ですよね。私ドレスとか持ってないのですが」
「それならもう手配済みだから心配ない。明日には届くだろう」
「え…」
「私からのささやかなプレゼントだよ。君に似合うと思って買ったドレスだ…是非着てほしい」
エルヴィンはナマエの髪をさらりと撫でると慈しむような目で彼女を見た。まるで明日には届くと言うそのドレスを着ている姿を想像しているような目だ。青の双眼の奥底にどろりとした欲の塊を見た気がして、ナマエは無意識にエルヴィンから距離をとる。
「すまない、嫌だったか?」
「え…、いえ…」
「そうか…」
すう、と離れていく腕に何となくほっとしながらナマエはすっかり冷めてしまったコーヒーを啜った。