さわさわと揺れる大きな木の下でミケは昼寝をしていた。駆け寄って揺り起こすとミケはうっすら目を開けて鼻をならす。
「ミケ!ミケ起きて!」
「…何だ」
「聞いて!私、リヴァイ班に入ることになったよ!」
「…………そうか」
「…喜んでくれないの?」
「……嬉しいさ、もちろん」
「嘘だ。ミケって嘘つくとき右の口の端が少し上がるの知ってる?」
「俺にそんな癖はない」
「ちぇ、引っ掛からなかった。でも喜んでくれてないのは本当でしょう?」
「………」
ミケの腕が伸びてきてそれが頭の後ろに回ると優しく引き寄せられる。そのままミケの胸に体を預ければ大きな手が頭を撫でてナマエは気持ち良さそうに目を細めた。
「特別作戦班は、危険な任務も多い。リヴァイの側だからと言って安全なわけではないんだぞ」
「わかってるよそんなの。でも、嬉しいの。だって兵長が私の実力認めてくれたってことだもん」
「……」
「え、何で怒ってるの?」
「……お前のことは、俺が誰よりも認めてやってるだろう」
「んふふ、なぁんだやきもちかぁ」
「何でそうなるんだ」
くすくすと笑いながらナマエはミケの胸にすり寄った。優しいミケのにおいを胸一杯に吸い込んで目を閉じる。このままずっと、こうしていられたらーー。
幸せな気持ちのままふと目を開けるとミケの姿はどこにもなく、抱き締めていたのはただのクッションだった。あぁやっぱり、今の自分はこちらに居るのだとナマエは小さく肩を落とす。
「ミケ…、何処に居るの…」
ぎゅう、とクッションに顔を埋めてミケの温もりを探す。あの頃のことを夢に見るたび、ミケに会いたくなるのだ。ゆっくりと体を起こして時計に視線をやると会社に行くまでまだまだ時間がある。シャワーを浴びて、たまには外で朝食をとるのも良いかもしれないと身支度を整えて家を出た。会社の目と鼻の先にある喫茶店の朝食が美味しいと聞いたことがあるのを思い出しそこへ向かう。ドアに掛かったopenの札を確認してそれを押し開ける。からん、とベルがなってその音に反応した店員がひとり駆け寄ってきた。
「いらっしゃいませ。お一人ですか?」
「はい…そう、で…!?」
「?……お客様?」
「あ、いえ…何でも……」
「ふふ、そう…覚えているんだね、ナマエ」
「!…な、ナナバ?」
「うん。君が来るのを待ってたよ」
ナナバはドアに掛かっている札を裏返すとナマエの手を引いて奥へと歩き出す。店にはまだ誰も客が居ないようだった。
「ナナバ、…あの…待ってたって、」
「ん?うん、そのままの意味だけど」
「だって、私が来るなんてわからないのに」
「でも来たじゃないか」
調理場になっているカウンターの裏を抜けてさらに奥へと進む。従業員用の扉をくぐると小さなロッカールームのような場所に出た。
「お客さんだよ」
「え、…ちょっと、?」
「あとはお二人でどうぞ」
押し込められるように中に入るとナナバはさっさと扉を閉めて部屋を出ていった。ナマエは呆然とその扉を見つめる。
「ナマエ」
声がかけられると同時に後ろから抱き締められる。とてもあたたかい、聞き慣れた声。ナマエは一瞬、自分の息が止まったような感覚を覚える。恐る恐る顔を上げるとそこには会いたくて堪らなかった男がいた。
「ミ、ケ…」
「あぁ」
「っ…ミケ、」
じわりと視界が滲む。ナマエは目元を袖で乱暴に拭うとそれを止めるようにミケが腕を掴んだ。そのまま向きを変えられ向かい合うと、再び強い力で抱き締められる。ミケは首もとに顔を埋めるとすん、と鼻をすり付けた。変わっていないな。ポツリとそう口から溢すとナマエを抱き締める腕に力を込めた。
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