(現パロ。死ネタ)
「すまない」
「…何が?」
「こうすることしか、出来なくて」
「何で?私は嬉しいけど」
足元から吹き付けるビル風を受けながらエルヴィンの腕に抱きつき頬を擦る。エルヴィンは力なく笑ってナマエの頭を優しく撫でた。
エルヴィンは疲れてしまったのだと言った。数ヶ月前まで大企業の重役として働いていた彼はある日突然仕事を辞め、家に引きこもった。理由はナマエにもわからない。ただ少しやつれた頬だとか、目の下の消えない隈だとか、そういうものを見たらなにも言えなかった。当時エルヴィンが住んでいたマンションを引き払い、彼をナマエの狭いアパートに置いた。大人一人を養うのは大変だったが、ナマエはエルヴィンの為なら何でも出来た。
「…死のうと、思うんだ」
「え…?」
「このままだと君にも迷惑をかけるし、俺は前のように社会に出ていく気はない。だから、」
「なら明日、仕事辞めてくる。このアパートも引き払うから、色々捨てたり…数日かかるけどいい?」
「…」
「何よその顔。どうして驚くの?」
「いや、…君の言っている意味が理解できない」
「一緒に死んであげるって言ってる」
「…何故、」
「決まってるでしょ。あなたを一人にしたくないからよ」
「……」
「私も、一人になりたくない。だから、連れてってよ」
「…はは、」
エルヴィンはふい、と下を向いて乾いた笑みをこぼした。エルヴィンが笑ったのを見たは数ヶ月ぶりだった。
「…本当に、良いのか」
「うん」
「………ナマエ、やっぱり君だけは」
「もう、しつこい。今一緒に死ななくたって、どうせ後追っちゃうんだってば」
「……ナマエ、ありがとう。愛してるよ」
「私も。愛してるよ、エルヴィン」
互いの指を絡めながらきつく手を握る。触れるだけのキスを交わして、二人は同時に足を踏み出した。
永遠を生きた数秒間のこと