(訓練兵時代)


訓練兵を今日で卒業しそれぞれが所属する兵団を決める。上位10人は憲兵団への入団が認められるが、少なくともナマエはそんなもののために訓練を頑張ってきたわけではない。


「私…調査兵団に入る」

「駄目だ」

「何でよ」

「…わかるだろう」


エルヴィンの眉間に皺が寄る。調査兵団に入れば殆どの確率でそう遠くない未来に死ぬことになるだろう。そんなことはナマエとて百も承知だ。そしてそういう彼だって調査兵団に入るつもりなのだ。


「人類の為だなんて、そんな綺麗事言うつもりないわ」

「…では何故だ。少し前まで憲兵団に入ると言っていたのに」

「それはあなたに反対されると思って嘘ついてたの。現に今反対してるでしょ」

「……それで?」

「え?あぁ理由ね。エルヴィンが調査兵団に行くからよ」

「…俺はお前の命の責任まで持てない」

「構わないわよ。自分の身は自分で守る。その為に3年間頑張ってきたんだから」

「ナマエ、頼むから…」

「私が内地で平々凡々な毎日を過ごしている間に、あなたが…私の知らないところで死ぬなんて嫌なのよ」


エルヴィンは目を見開くとまたすぐに眉間に皺を寄せてどこか苦しそうな、今にも泣いてしまいそうな顔をした。ナマエの頬に指を滑らせるとそうか、とぽつりと言葉を落とす。


「泣くのは私が死んだときにしてよね」

「…死なせないさ」

「そうね。簡単に死んでなんてやらないわ」


にこりと笑うとつられてエルヴィンも口元を緩める。少し屈んでナマエの額にキスを落とした。少しでも長く、彼女と居られる未来が続くことを願いながら。


私はではありませんので