何かに例えるのだとしたら、それは光だと思う。どこまでも広い草原を馬で駆けるエルヴィンの後ろ姿を見ながらナマエは静かにそう思った。
今回の壁外調査ではエルヴィンの考案した陣形のおかげで巨人とそれほど遭遇することもなく順調に進んでいた。今のところ犠牲者も少ない(それでもまったく居ないわけではないのだが)。本当にエルヴィンは天才だと思う。周りからいくら悪魔と言われようとナマエはエルヴィンのすることが間違いだとは思わないしそのせいで自分が命を落とすことになってもいいとさえ思っていた。好きなのだと、思う。それは人間としても一人の男としても。決して伝えることのない思いはこのままどこに行くのだろう。そっと胸に手を当てるとそこは確かに命を刻んでいた。
「眩しいですね」
「…そうだな」
「団長が、ですよ」
「それはどういう意味だ?」
「…無事に帰れたら、教えます」
何処かで太陽に焦がれた愚かな男の話を聞いたのを思い出す。近づきすぎて翼をもがれてしまったその男が、少しだけ自分と重なった。
限りある光源のすべて