「ナマエ、久しぶりだな」


呼び止められて振り向くと目に映った懐かしい姿にナマエは少しだけ目を見開いた。


「エルヴィン…」

「少し痩せたんじゃないか?」

「あなたは何だか逞しくなったわね」

「はは、そうかな。前線から離れてしばらく経つし、筋肉は落ちたと思うが」

「体じゃなくて雰囲気よ」


少し前に行われた壁外調査の報告に来たのだとエルヴィンは言った。またたくさん死なせてしまった、と目を伏せるエルヴィンの背中をぽんと叩いて止まっていた足をまた動かす。
エルヴィンとは同期だがこうして話をするのは随分久しぶりだ。以前は同じ志を持っていた仲間だったが、兵団を選択したときにその道を違えてしまった。エルヴィンは憲兵団を選んだ自分を恨んでいるだろうか。ナマエは胸の中でいつもその思いに苛まれている。


「元気に…やっているか」

「ええ。ここは平和だもの」

「そうか…」

「エルヴィン…私を、恨んでる?」


思ったことがぽろりと口からこぼれ落ちる。ぴたりと歩みを止めたエルヴィンを見ると彼は珍しくきょとんと目を点にしていた。そしてぶは、と吹き出すと腹を抱えて笑いだす。


「なっ、何よ…!」

「いや、…すまない…君もナイルと同じことを言うんだな」

「え…?」

「あいつも言っていたよ。自分を恨んでいるだろうと」

「そう…なんだ…」

「俺はナイルも、ナマエのことも恨んでいないよ。むしろ尊敬してる…君たちのそれは、俺にはできない生き方だから」

「……」

「それより今度、食事でもどうだ」

「……考えとく」

「是非前向きに頼む。それじゃあ、そろそろ行くよ」


ひらひらと手を降ってエルヴィンはくるりと体を翻す。だんだんと小さくなる彼の背中にある一対の翼がナマエには酷く眩しく見えた。


なんか欲しがる奴は