(パスなしですが微裏)
ずず、と何かを引き摺るような音が薄暗い廊下に響く。夜もすっかり更けてよくよく見なければ足元さえも覚束ない。そんな中をナマエは壁づたいに歩いていた。痛む右足を引きづりながらやっとの思いで医務室まで歩いてきたのだ。当然そこには誰も居ないが手当てくらいなら自分で出来る。なるべく音をたてないように昼間のうちにちょろまかした鍵で扉を開け中に入った。
ことの始まりは本日の午前中に行われた訓練でナマエが怪我をしたことだった。怪我と言っても足首を少し捻っただけで大したものではない。すぐに手当てをして大人しくしていれば一週間と経たずに良くなるだろう。しかしそこでナマエは以前怪我をした時のことを思い出す。確かあのときも訓練中だった。ちょっとした不注意から腕を擦りむいただけだったのだが、一緒に訓練していたリヴァイに注意力が足りないだのアホだの間抜けだの散々なじられたのだ。壁外では少しの油断が命に関わることはよくわかっている。訓練だからと気を抜いていたわけでもないし擦り傷くらいなら他の兵士だって負っているのになぜ自分ばかりと(階級が上だけに反論も出来ず)不愉快な思いをしたものだ。今回のことがばれればまた何を言われるかわかったものではない。幸い午後は書類整理などの雑務のみだ。ナマエは怪我を隠し通し夜にこっそり医務室へ行こうと決め、徐々に痛みを増す足を庇いながら仕事をこなした。そして今に至る。
「だいぶ腫れちゃってる…」
疼くような痛みに顔をしかめてナマエは腫れ上がる足首に氷のうを当てると湿布を貼り付け包帯を巻く。これではブーツは履けそうもないなと片手に脱いだそれを持ちひょこひょこと跳ねながら入り口に向かった。扉を開けるとそこには何故かリヴァイが立っていて手元の明かりで顔が下から照らされ何もしなくても凶悪な顔なのにそれに磨きがかかるばかりか不気味さも加わってナマエは一瞬自分の心臓が止まったように思えた。咄嗟に今が夜中だということを思いだし叫ばなかった自分を褒め称えたい。
「っび、びっくりした…どうしたの…?」
「お前こそ何してる」
「私は…ちょっと…」
足を隠そうにもブーツを脱いだままのそこは当然剥き出しになっていて。リヴァイは目線を下に下げると包帯が巻かれている足を見てため息をついた。
「また怪我しやがったな」
「…べつに、リヴァイには関係ないでしょ」
「……」
「……(な、何で黙るの)」
じろりとこちらを睨む三白眼と沈黙に耐えきれずにナマエはリヴァイの横をすり抜ける。用がないなら行くからね。そう言いながらまたひょこひょこと歩き出すと微動だにしなかったリヴァイが突然ナマエを肩に担ぎ上げた。
「ぅわっ!?な、何すんの!?」
「そんなひょこひょこ歩いてたらてめぇの部屋につく頃には朝になっちまうだろうが」
「だ、だから…リヴァイには関係な……ぎゃあっ!」
ばしっと尻を叩かれ思わず体が跳ねる。色気のねぇ声だと文句を言いながらリヴァイはゆっくり歩き出した。ぐらぐらと揺れるのが怖くて思わずリヴァイにしがみつくとそれで良いとばかりに今度は太股を撫でる。
「ここからだと俺の部屋の方が近いな」
「は!?私の部屋に連れてってくれるんじゃないの!?」
「暴れるんじゃねぇよ…落とされてぇのか」
「あっ…!ちょっと、変なところ触らないで!」
肩に担がれているためにリヴァイの顔と並ぶナマエの尻は彼から見えないにしろいくらでも触ることが出来る。パンツの上から尻の割れ目をなぞるように移動する手に思わず変な声が出る。
「ひぁっ!?や、…リヴァイ!」
「良い声出せるじゃねぇか」
「っ……もう、降ろして!自分で歩く!」
「怪我人が何言ってやがる。大人しく担がれてろ」
「じゃあその手つき何とかしてよ!それとちゃんと私の部屋まで連れてって!」
「いちいち声がでけぇよ。それにな、こっちはてめぇが落ちないように支えてやってんだ。少しくらい大目に見ろ」
「!…あっ、や、やめ…ッ」
くにくにと秘部を押しつぶすように刺激されるがパンツの上から故かどうにももどかしい。足をすり合わせるとリヴァイは鼻で笑い小さく淫乱、と呟いた。そうこうしているうちにリヴァイの自室に着いたらしく依然担がれたまま部屋の中に入る。思いのほか優しい動作でベッドに降ろされるとナマエはキッとリヴァイを睨みつけた。そんなことはお構いなしとリヴァイはナマエの足元にしゃがみこむと包帯が巻かれている足をそっと持ち上げた。ちら、と視線を上げまるで心配しているとでも言いたげな眼差しに不覚にもどきりと心臓が跳ねる。
「ただの捻挫だろうが…少なくとも二週間は安静だな。エルヴィンには俺から言っておく」
「一週間で充分よ!」
「駄目だ。治るまでこの部屋から出ることは許さねぇからな」
「は!?無理に決まってるじゃない!私にだって仕事があるんだから」
「ここに運ばせる。どうしてもと言うなら縛り上げて拘束するが…どうする」
「…横暴!」
「聞きたいのはそんな言葉じゃねぇ。さっさと選べ」
ぐっと怪我をした方の足を握られ痺れるような痛みが走る。離して欲しい一心でわかったと頷くとようやく手が離された。ほっとしたのも束の間、今度は肩を押されてそのままベッドに倒される。リヴァイはナマエの足の間に自分の体を割入れパンツの上からまたするりと秘部を撫でた。
「それじゃあ続きだ。疼いて仕方ねぇだろ?」
「っ…変態!鬼畜!チビ!」
「言ってろ…時間はたっぷりあるんだ。てめぇから求めるよう調教してやるよ」
舌なめずりをするリヴァイにナマエはさっと血の気が引いていくのを感じた。一体なぜ自分がこんな目に、と一枚ずつ服を剥ぎ取られながら考える。全てはリヴァイの愛情の裏返しなのだが、ナマエがそれに気が付くのはもう少し後の話だ。
毒杯と名付けよ