「ガーデンパーティー?」
「らしいよ。英国式の招宴らしい。君にとても似合うだろうから、面子に加えてくれと頼んだのだが、許可が降りなくてね」
若い子───とはいえ、私や治さんと同世代に人気の西洋菓子の食べ放題。そこの限定催事に出て欲しいと頼まれたらしい。組合や森コーポレーションの面々も。
「お花と云えば、私の可愛い奥様なのだけどなあ」
治さんは少し拗ねながら、撮影用の衣装に着替える。格子柄の背広は落ち着いた灰色。鮮やかな青の襟締は少し幅広。駱駝色の手袋も映える。
「花は何が善いと思う?」
「……車百合?」
「一気に和風な雰囲気になるね」
「ならもう薔薇で善いじゃない?王子様には一番お似合い」
襟締の形を整えながら、色とりどりの薔薇を。とはいえ彼に触れれば消えてしまうけど。生花の方がよっぽど善いわ、私の異能なんかより。瑞々しさってある種の危うさがあると思うの。何れは枯れてしまう、触れれば壊れてしまう。
赤、桃、橙、黄。それぞれの意味を持って束ねられた薔薇を持ちながら、宣材写真。それを此方から眺める。
写真機を構えた撮影家さんに「奥さん、どうです?御主人の魅力は」と尋ねられた。
何とお答えすれば善いのか、求めている答えも思い付かなかったけど、あの人の本当の姿は私が知っていれば善いこと。軟派な姿しか他には見せないで。
「主人は華のある人ですから」
立ち姿を変え、構え方を変え。花束から薔薇を一本抜き、此方へ差し出した。それを見て、撮影家さんが、より一層歓喜の声をあげる。何故その花なのか、理由を知っているのは夫婦だけ。
いやァ、終わった、終わった。髪を掻きながら、私の方へ歩んでくる。
「お疲れ様」
「花を見るとね、どうしても君を思い出してしまう。私の隣で永久に咲く花」
手に持った、橙の薔薇の茎を短く折り、私の左耳辺りに挿した。慈しむように細められた鳶と、頬を撫でる手。「愛情を意味する花は、卯羅にしか贈れないなぁ」
「妬けてしまうわ」
「嫉妬に燃える君も実に愛らしい。私、好きだよ、あの君」
「嫉妬深いの、ご存じでしょう?」
「身に沁みるよ」
何故か跪いて、持っていた花束を差し出す。酷いわ、そんなの、酷い。私の、王子様。
「健やかな時も、病める時も……なぁんて。このお花、貰って善いんだって。家に飾ろう」
そうやって茶化して。私にくらい、覗かせてくれても善いじゃないの。云ったところで、誤魔化されて、終わりでしょうけど。
「催事が始まったら、一緒に来よう。私、料理の開発まで頼まれたのだよ?蟹とお花の西洋麺。私と卯羅みたいだろう?」
「美味しそう。治さんにしては、上出来じゃないの」
「どういう意味だい、それ」
きっと、今日のことが、社長以外の長の耳に入ったら、確実に同じものを催すでしょうね。一人は本場だし、もう一人はあの子に可愛い服を着せたい!なんて云って。
図々しいかもしれないけど、その時に、私たちの何年目かの記念日をお祝いして欲しいわ。だって、お花に囲まれる私を、彼は所望するから。素敵なお洋服も着たい。お花に囲まれて、幸せって、思える日が来るなら。来るはずよね。治さんが、素敵と云ってくださるのだから。