「もーー!!おっっそいんだけど!?」

久しぶりに親友の携帯に電話してみたらいきなり怒号が飛んできた。実は数週間前からスマホにメッセージを飛ばしてくれていたらしいのだが、普段使わないからうっかり確認するのを忘れていたのだった。

「ごめんよー 忙しくってね」

「いやあんたこの間『この時期は海外では春休みだから帰ってこれるかもぉ』とか期待させるからさぁ! こっちは久しぶりに花見がてら酒でも誘おうと思ってたのにこれよ!! もう桜終わりそうなんですけど!?」

「あっはっは。宴会シーズンなのに元気ですなぁ。てか当分帰れそうにないわ! すまんな!! 」

「はぁー!? お前日本に帰ったら覚えとけよ!!しこたま飲ませて全部奢らせてやるからなキャリアウーマンめ!! あ〜〜〜こんなに綺麗な桜が見れないなんてかわいそう!!本当かわいそう!! 桜並木なんか駆け抜けたいくらい綺麗なのに!! 自然とスキップしちゃうのに!! でも残念!! もうしゅうりょぉ〜〜」

「もしかしなくても酔ってるね君?」

その後、親友は根をもっていたのか、それとも酔って記憶力が低下したからなのかは知らないが、やたらと花見、花見とうるさかった。相手するのが面倒だったので適当にあしらって電話をきってしまった。……また開幕怒られるパターンかもしれない。

「うーん、桜の季節かー……」

まぁ、毎日見てますけどね?

今も視界一杯に広がる薄ピンクの花達。風が吹けば、儚げにはらはらと地に落ちて行く。ちなみに遅咲きなのでいまが満開の季節。

あの子には海外勤務していると言う事にしてあるが、私は今日本にいる(といっても異空間だけど)。審神者として刀剣男士達と共に戦う日々。住まいの本丸には立派な桜の木が植わっている。お花見し放題でなかなか贅沢。しかし最近、なんだか感動が薄れているような。

「ちょっと見飽きたかもしれない」

***

「第一部隊帰還しましたよーっと。」

「おかえり〜 今日もご無事でなにより」

「おうっ ただいま! オレには愛染明王の加護がついてるからな! 無傷だぜ!」

「んー? 俺だって派手に暴れてても無傷なんだけど! 」

「お前らにもちょっとつけといた! 」

「お裾分けできんのかよ! 」

「おちつかないのでかえしますねー」

「えっ、僕に? ありがとう……?」

蛍丸を筆頭にわらわらと帰ってきた第一部隊。ちなみに他は愛染、貞ちゃん、不動、いまつる、小夜という構成である。いやぁ、ショタ万歳。

戦帰りの皆の周りには桜の花が舞っている。ふよふよと空中に浮くこれは審神者の私にしか見えない。所謂刀剣男士のオーラ。絶好調の時だけ現れるので皆の調子が一目瞭然となり、非常に役立っている。最近はどんな時でも皆咲き乱れている事が多く、桜に見飽きた原因のひとつでもあった。

気分が高まっているせいか、目を離した隙にハイレベルな鬼ごっこが開始されていた。ざ、残像しか見えねぇ。どうやら愛染が鬼っぽい。加護をつけて回る鬼と全力で逃げる憑くも神とかシュールだね。桜のオーラは未だに満開。どうやら本当に手入れ必要な子はいないらしい。軽く手を叩いて号令をかける。

「はいはい、皆一応汗かいて汚れただろうし着替えてらっしゃいな」

しゅめいとあらば! と、いまつるが渋めの声で返事して、不動が大爆笑。愛染と貞ちゃんは駆け足で帰っていった。皆元気だなー。次はもうちょっと練度が要る所へ行かせても良いかも。なんて考えていたら蛍丸に可愛らしく腕をツンツンつかれた。

「主はもう仕事終わった?」

「ばっちし!」

「じゃあさ、いまから桜の木の下に来て?」

「了解〜 なに、愛の告白? 」

「それは来てのお楽しみかな! 」

伝説の木の下フラグかと思ったら違うらしい。さらっと流されてしまったし。それにしても蛍丸がこんなにワクワクはりきってらっしゃるとは。何があるんだろう?

***

頼まれた通り桜の木のある庭にでれば、明石と愛染がござを広げて待っていた。愛染は着替え終わるの早いな!

「やぁ、今日は来派のお集まりで? 」

「二人にせがまれまして……どうせやったら主はんも呼ばはったらええと思いましてなぁ」

「光栄ですわぁ。ありがとね 」

「オレはもっと祭りっぽいやつでも良かったんだけどなー」

「甘いもんをつまむだけの花見もええねんで。お、蛍来よった。ほな始めましょか」

来派の皆と私の4人が集まった所で明石がお辞儀する。つられて真似すると、茶碗と茶筅を取り出していた。蛍丸が沸かして来たらしいお湯でシャカシャカとお抹茶をたて始める。

「お茶の席だったのか。 どうしよう私、いまだに作法身についてないんだけど」

「自分も見よう見真似やし適当でええんちゃいます? 正味言うたら何か間違うててもこっちはさっぱりわかりまへん」

「歌仙に見られでもしたら俺達皆怒られちゃうよね 」

「だなー」

そんな感じで各々が信じる一番お行儀よい飲み方でお茶を頂いた。まだまだ飲みなれてないから判断つかないけど比較的美味しかったように思う。なにより普段やる気なさすぎ明石君が自分の為に用意してくれたお茶である。もう、べた褒めしたよね。愛染が手渡してくれた羊羮を味わいながらぼんやりしていれば、横から明石が覗きこんでくる。その様子に首を傾げると彼は微笑んだ。

「やっぱり主はんは幸せそうな顔が一番ええわ」

「そう? 間抜けとかよく言われるけど」

「それがええんですよって。あんさんがいつもニコニコ笑って出迎えてくれるから戦帰りでもゆっくりできる訳やし 」

「おい蛍、国行が主さん口説いてる 」

「ねー。 やらし〜 」

「もちろん二人の笑顔も好きやで? 」

「いまの流れでそれはやめろよ! 」

ニヤニヤ茶化し始めた愛染と蛍丸をさらっと逆襲する明石。さすが保護者は一枚上手である。そんな彼のまわりには桜の花弁が少しだけ舞っていた。私と言えば、今度はちょっと頭が痛くなっていた。うーん、と唸りながらこめかみを押さえる。今度は愛染が首を捻っていた。

「どうしたんだ主さん? 」

「いや、ちょっと最近お花見飽きたとか思ってた自分をぶん殴りたくって。こんなに幸せな事ないのにさぁ 」

「桜だってそれくらい許してくれると思うぜ! 皆誰だっていまよりもっと楽しい事求めて生きてるんだからさ 」

膝を立てて私の頭をぽんぽん撫でてくる。……なんだかんだ言って愛染も審神者を口説き落とすのが上手いなぁ、なんて心の中でひっそり笑った。

「ちなみにオレはいまちょっと退屈してきた所かなー……そうだな、祭りとかどうよ! 」

「国俊ったらそればっかり」

「よーし、わかった。次はすっごい祭を見せてぎゃふんと言わせてやるからな! 」

「主、なんか眠くなってきたから膝の上貸してくれない? 」

「ほな貸したるわ 」

「明石のはなんか固いからいい」

「おっと、気になるので再現してもらってもいいですかね」

「一人くらい聞けよなー!?」

そんな調子で騒いでいたら短刀の子達が集まってきて、更にはお茶好きの刀達も参加しだし、果てには酒飲み連中までやって来た。結局いつものどんちゃん騒ぎになってしまいましたなぁ、なんて笑う明石の背後にはやっぱり桜の花びら。どの男士達も笑顔を咲かせて、朝よりもずっと贅沢な光景が広がっている。

「俺は気が長いからへーき。飽きたってずっと傍にいてあげる。」

これは蛍丸が私の膝上で微睡みながら自信たっぷりに言った台詞。

戦いが終わるまで、皆が無事に帰ってこれるこの本丸がずっと続きますように。なんて柄にもなく願った。

お花見三昧

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