第1回人気キャラ投票@




「只今より、第一回キャラ投票結果を発表しまーす!」


 バンッ、とでも音のしそうな勢いで照らされたステージに立っているのはふーちゃんだ。ステージに立つと余計に美少女なのが目立つふーちゃん、本日も黒い美髪を煌めかせ、なんなら衣装はTKT48みたいに可愛い少女にしか許されない黒とピンクのチェック柄のふりふりスカートを着て、大きな瞳でパッチンと器用にウィンクする。


「司会は私、生徒会図書役員の薄野芙弓が務めまーす」

「何これ」


 そんなテンション高いふーちゃんにいち早く反応したのは私の隣の隣の隣に座る松隆くんだ。その言葉は私達全員の心を代弁していた。


 御筋(みすじ)講堂に突然呼ばれたかと思えば、最前列には私達の名前が書かれた白い布がかけてあった。それぞれの名前のところに着席するようにと知らない人から指示され、着席した後に残る席を観察すれば、最前列にはモブからメインキャラまでの座席が用意されていた。端から順に赤井くん、飯田さん、有希恵、蝶乃さん、鹿島くんと生徒会メンバー。通路を挟んで私、桐椰くん、月影くん、松隆くんと御三家メンバー、更によしりんさん、彼方、遥くん、雅と御三家+α的なメンバー。そして通路を挟んで優実、鳥澤くん、八橋さん、名前だけの幕張匠というその他的なメンバーが並んでいた。一列空いて三列目以降には野次馬よろしくその他の花高生が座っている。


「キャラ投票とはー、御三家シリーズに出ているキャラクターについて読者のみなさんに愛のあるコメントと共に投票をしてもらうものでーす」

「説明になってなくね?」

「まったくだ」


 桐椰くんと月影くんが呆れた目でふーちゃんを見つめる。でもふーちゃんは全く気にすることなく、「ではこちらをご覧くださーい」と舞台の壁を示してみせる。そこに降りてきたスクリーンには、最前列に並ぶキャラ達の名前が映し出された。


「今回投票される対象となったキャラはこちら! 最前列に並んでる皆さんですね! もちろん、中には謎のモブに投票したい人もいると思うので、『その他』枠も設けてありまーす。でも残念ながら最前列の人達以外には投票がなかったので今回はどーでもいーでーす」

「ん、じゃあ俺達はみんな一票以上入ってるってこと?」


 彼方が手を挙げて質問、隣の遥くんが「そういうことなのかな」と首を傾げながら相槌をうつと「いえ、そーとは限りません」とふーちゃんは残酷に首を横に振る。


「あくまでも最前列のみなさんは“作中である程度役割があると思われていそうなキャラ”です。必ずしも読者人気があるとは限らないので、人気がなければ票はないですねー」

「じゃあ呼ばれて座らされたけど用なしって人もいるってこと? 惨いことするわね」


 「ていうか、いない人いるじゃないの」とよしりんさんは幕張匠と書かれた席に視線を向けた。私と雅がドキッとすると、ふーちゃんは「連絡先が分からない人は呼べなかったんですよねー、一応告知はしたんですけど」と残念そうに肩を竦めた。隣の桐椰くんは幕張匠のほうを向いていたのでどんな表情をしていたのかは分からなかった。


「というわけで、発表を始めたいと思いまーす! もちろん票数ゼロの人もいるので、その人達から順番に読み上げますね」


 ふーちゃんは楽しそうににっこりと口角を釣り上げた。何気にふーちゃんも松隆くんと同じ人種なんだろうか。


「因みに票数に応じて席も決まってます。ゼロ票の人はそこのお座布団があるところに正座してください」

「グロッ! 俺ゼロ票有り得るのに!」


 哀しそうな声を上げたのは雅だ。それを視線だけで確認した鹿島くんが挙手して質問する。


「因みに、この投票はいつ時点で行われたものなの? それ次第で票数は違うと思うけど」

「第二幕は完結した後ですね。第三幕も少しだけ連載されてたので、第三幕の冒頭部分も含んでますよー」


 ということは、鹿島くんの人気は最下層までいったところかな。うんうん、と腕を組んで頷いてみせるけれど、鹿島くんは不敵に笑っただけだった。その隣の蝶乃さんは面倒くさそうに頬杖をつく。


「どうでもいいから、早く発表してくれない? 前置きには飽きたわ」

「これは失礼しましたー、では発表します、ゼロ票、蝶乃歌鈴」

「はぁ!?」


 蝶乃さんが驚きのあまり叫びながら立ち上がり、松隆くんが鼻で笑った。ふーちゃんは狙っていたかのように「さぁさぁ前へどうぞ」と促す、が、蝶乃さんはそっぽを向く。


「そんなとこに座るくらいならここにいるわ」

「そうはいきません、企画ですし」

「なんの企画よ!」

「キャラ人気投票企画です」

「ッ……」


 わなわなと肩を震わせた蝶乃さんは乱暴に席を離れ、ステージに上る。一番端の座布団に大人しく正座した後は目と口を閉じて不機嫌そうに瞑想じみたことを始めた。ふーちゃんはそれを見届けた後に続ける。


「では続くゼロ票組」

「まだいんのかよ……」

「赤井綾人、飯田咲妃、梅宮有希恵、桜坂優実、鳥澤章時、幕張匠、八橋美琴」

「ゼロ票多っ!」


 桐椰くんの憐れみの声は瞬時にツッコミに変わった。バンバンバンッとスクリーンに映し出される八人の名前。確かに多い、というか明らかに選択肢ミスだ。なんで選択肢に入れてもらえたんだろうと首を捻りたくなるくらいのモブ達……。


「うーん、まー仕方ないよねー、あたし出番ないしー」


 飯田さんは納得しながら立ち上がる。その隣の赤井くんは「晒上げじゃねーか」とぶつくさ文句を言う。鳥澤くんは「俺って登場直後くらい? 票入ってなくても仕方ない?」と二列後ろのバスケ部メンバーに同意を求め、優実は「私も第二幕の最後にちょっと出てたくらいだし……」と項垂れた。そして八橋さんは無言、幕張匠不在(というかここにいる)。本当、なんでこのメンツがわざわざ選択肢に。


「ではでは、順番にコメントしますねー」


 ゼロ票メンバーがステージ上に正座させられたところで、ふーちゃんはキャラ紹介に移る。


「まず、人気投票時は生徒会副会長を務めていた蝶乃さん。投票はされませんでしたがマシュマロでは度々名前をお見掛けします。『なんなの? あの馬鹿。あれで高校生? 自分の事しか見えてない小学生でしょ』『蝶のさん最近かわいそすぎてうける』など」

「紹介する必要ないでしょそれ!!」

「そんな蝶乃さんはなんと御三家の桐椰くんの元カノです」

「うるせーよ!!」


 そして蝶乃さんいじり(多分既にいじめ)の火の粉は桐椰くんへ飛ぶ。


「因みにキスまでいったようです」

「なんで知ってんだお前!」

「こんなマシュマロも過去にありました、『蝶野さんとチューなんて笑うしかないですね……DT桐椰くん』」

「やめろ!!!!」


 最前列の何人かが吹き出し、三列目以降では「えっ今のマジ?」「えー桐椰くん超かわいい」「やだ抱きたい」と何やら不穏な声が聞こえ始めた。桐椰くんはといえば耳まで真っ赤になって俯いている。


「まぁ遼、お前のピュアキャラが守られてるからいいんじゃない」

「本編とは無関係なので本編では暴露されていないしな」


 松隆くんと月影くん、慰める気ゼロ。


「えー、俺はいいと思うけど。だって遼って彼女いたの中学のときだけだろ? さすがに中学でやろうとしてたら俺は反対してたし、付き合ってもない女の子とするのはよくねーよ」

「でも総くんと駿くんは違うんじゃん? 遼だけじゃん?」


 彼方と遥くん、飴と鞭。


「へー、アイツあれで童貞なんだ、やべーウケる」

「遼ちゃんは奥手なのが長所で短所なのよ。肉食系に見えて実は簡単に手とか出せないのよ」


 雅容赦なし、よしりんさんのフォローなのかなんなのか分からないコメントで桐椰くんは更に耳を真っ赤にして顔を両手で覆った。「もうやめろ……やめてくれ……」と念仏のような嘆きまで聞こえる。


「続きまして生徒会希望役員、赤井くん。ぶっちゃけ登場してたのは桜姫だけ」

「どーせモブだよ」

「投票時にこんなマシュマロがきました、『赤井綾人って誰でしたっけ?』」

「どーせモブだよ!」

「続きまして飯田さん、マシュマロもありません」

「仕方ないよねー、モブだもんねー」


 赤井くんの憤りを無視して飯田さんに移るも、赤井くんより更に悲しい扱いを受けているはずの飯田さんは無関心。ツインテールの毛先をくるくる指でいじりながら頷くだけだ。


「次に梅宮さん、御三家シリーズ冒頭で亜季を裏切った後もちょくちょく出てきてますね」

「…………」

「マシュマロでは『蝶野さんよりゆきえ?でしたっけ?そっちのほうがふぁっきゅーと思いましたまる』とのこと」

「…………」


 有希恵、無視。ふーちゃんも仕方なさそうに視線を戻し「因みに、マシュマロでは『蝶野』表記が多いですが、蝶乃さんの正しい苗字は『蝶乃』です。原文ママでお送りしております」と付言した。なるほど、誤字ではないのか。


「そして亜季の妹、桜坂優実さん。『純真!素直!純粋!なんて子は受け付けないんで優実ちゃんはいくら亜季ちゃんの妹(義理)だとしても嫌いです』」

「えっ……」


 優実の顔がひきつった。私の顔だってひきつる。読み上げますか、それ。


「一方で『御三家シリーズで書かれている視点からすれば優実ちゃんあざといと確かに思うのですが、優実ちゃんの得る情報だけで考えてみるとただ普通の思考を持った女の子なだけだと思うんですよね』との冷静なご意見も。優実さんについてはアンチも多いですが、賛否別れるようです」


 優実、苦笑い。こんなことをコメントされてもなんといえばいいのか分からないのは当然で、ふーちゃんが申し訳なさそうに「紹介するにはマシュマロ必須なんですけど、優実さんのマシュマロはこんな感じのものしかなかったんですよねぇ」と肩を竦める。


「因みに予告ですが、実は桐椰くんと再会してからの桜坂優実さん視点の短編は執筆されている最中です。桜坂優実さんが主人公、ご友人や桐椰くんが登場します」

「えっ、俺?」

「当然でしょう、優実さんのお話を語るために桐椰くんは欠かせませんとも」


 突然の短編予告に桐椰くんがギョッとするも、ふーちゃんはさも当然かのようにけろっと答える。なんだか桐椰くん散々だな。


「諸々のネタバレを含んでしまうので、御三家の矜持の巻末に収録予定です。桐椰くんと優実ちゃんは何を話していたのか、優実ちゃんはどんな気持ちで桐椰くんを見ていたのか、桐椰くんはどんな様子だったのか、などなど! どうぞお楽しみに!」

「……マジか……」


 再び俯いてしまった桐椰くんの口からは、深い深い溜息が漏れた。可哀想に、当時の様子を赤裸々に描写されるというわけだ。


「どんどんいきます、鳥澤章時くん、御三家の矜持にてまさかの亜季に告白するところから登場」

「あ、それ公言するんだ!」


 桐椰くんの大暴露大会が行われたせいである程度予想はしてたんだろうけれど、鳥澤くんも覚悟ができてなかったんだろう、ギョッとしてふーちゃんと観客を交互に見るし、顔は段々赤くなる。因みにバスケ部員からはひゅーひゅーとありがちな冷やかしが聞こえた。


「そんな鳥澤くんが関係するマシュマロ『松隆くんほんとなんなんですか!亜季ちゃん腹いせで鳥澤くんか鹿島くんとくっつけばいいと思う!』」

「あ、ありなの?」

「なしだよ」


 僅かに腰を上げた鳥澤くんに対し、松隆くんと桐椰くんが同時に言い放った。なんなんだろうあの二人。


「一応鳥澤くん宛てのマシュマロもありました『鳥沢くんからみたアキちゃんの顔面偏差値(略)が知りたい』」

「え、待って、俺それ知らない」

「松隆くんの権力で鳥澤くんには知らされなかったようです」


 当たり前だとばかりに腕を組んだ松隆くんに、鳥澤くんは委縮したように背中を曲げた。


「さて、次は幕張匠ですが、彼については情報もなければマシュマロもないですねぇ。いや、正確にはマシュマロで関係してくるものはあるんですけどね、これといってネタになるようなものがないのです」


 ふーちゃんは困ったように眉を八の字にした。私と雅だけがきっと目を泳がせる。


「そして八橋美琴さんもモブ過ぎてマシュマロすらありません。因みに桜姫にて亜季に絆創膏を貸したり、矜持にて鹿島くんと借り物競争に出たりとやはりモブな登場をしています」

「薄野の紹介、何気にひでぇよな」


 こそこそと桐椰くんが耳打ちするので頷いた。八橋さんは(性格柄)終始無言で俯いているので余計に酷く見える。


「というわけで、以上、ゼロ票組でしたー!」

「長かったね、ゼロ票」

「今後ゼロ票組は全てその他枠でいいだろうな」


to be continued...