「…………」
私は公園に一人で突っ立っている。御三家はベンチに座って私を遠巻きにじっと眺めている。
「…………」
松隆くんがあくびをした。桐椰くんがちょっと顔をしかめて松隆くんに話しかけている。月影くんは無視して本を読んでいるので、桐椰くんがちょっと小突いた。
「…………」
ちらりと背後の噴水を振り返る。真夏なので噴水の近くは涼しくていい。その噴水を囲むブロックの淵にはカップルや友達同士が等間隔に座っている。
もう一度御三家を見た。松隆くんは遂に頬杖をついている。桐椰くんは眩しそうに顔をしかめて、ちらっと頭上を見上げた。月影くんは木陰の下で優雅に読書を続けている。
「…………」
松隆くんが桐椰くんに何かを話した。桐椰くんは眉間に皺を寄せて、少し悩むような顔つきになり腕を組む。その後に腕時計を指して何かを話した。松隆くんは口答えするような雰囲気で何かを答える。月影くんは終始無視して読書を続ける。
そんな三人のもとに、女の人が二人駆け寄ってきた。一人は女優なのかなってくらいつばの広い帽子をかぶっていた。少し前屈みになった二人が親し気に三人に向かって何かを話しかけている。一人はワンピース、一人はショートパンツで、その白い足が惜しげもなく露出されて、太陽に反射して輝いているようにさえ見えた。
「…………」
松隆くんが穏やかな笑顔で何かを返した。桐椰くんは少し顔を赤くしてそっぽを向いている。月影くんは無視して読書を進めたままだ。女の人二人が三人のもとを離れる気配はなく、でも松隆くんが変わらぬ調子で話し続けるせいか、暫くして女の人二人はどこかへ消えた。
すると今度は別の女の人が来た。今度は三人組で、かなりスカートが短いのに目がいった。思わずガン見してしまうけど、松隆くんが興味を示す気配はない。桐椰くんの顔がまた赤くなる。女の人のうち、一人が無理矢理月影くんの隣に座った。その人が月影くんの腕に無理矢理しがみつくと、ようやく月影くんが口を開いた。そして女の人が凍り付き、恐る恐る離れた。
そのせいか、女の人三人はそのままどこかへいなくなった。
松隆くんが舌打ちしたのが見えた。立ち上がり、桐椰くんと月影くんにも声をかけて、三人揃って私のもとへやってくる。
「……あのね、桜坂」
げんなりとした顔の松隆くんは、心底迷惑そうに私に向かって溜息をついた。
「桜坂が一回ナンパされるまでに、俺達は一体どれだけ待てばいいわけ?」
「なんでそんな反語的な言い方するの? 私が一生ナンパされないって言いたいの!?」
「と、最初に伝えたが?」
「遼も反省してよね。遼との口喧嘩で──売り言葉に買い言葉で、こんなことになったんだから」
「はいはい、悪かったよ。でもだから分かったろ、お前は絶対ナンパされないって」
「桐椰くんのばーーーーーか!」
ぷうっと頬を膨らませた。いいもん。ナンパされるのは頭が弱そうな子だけって松隆くん言ったもん。私は頭が弱そうに見えないだけだもん。可愛くないからじゃないもん。……多分。