御三家とちびっこ


「従妹を預かった」


 そんな台詞と共に、月影くんは女の子を連れて現れた。預かった、と言ってるくせに面倒を見るつもりはないのか、背後に立たせているだけで手も引いてない。私達が一斉に顔なり体なりを傾けて見たその子は、多分七、八歳くらい。栗色の髪はくりんくりんと好き放題に跳ねながら腰まであって、瞳も同じ栗色でくりっとした二重だった。白いふりふりのワンピースに白い靴、挙句にまるで外国人みたいに可愛い顔となればお姫様みたいで──。


「駿哉の従妹って、商社に勤めてる叔父さんの娘さんのことだよね? 確か転勤してそのままフランス勤務になったとかで、こっちにいないんじゃないっけ」


 コーヒーカップ片手に頬杖をついていた松隆くんがそんな台詞を放った。そう、外国人みたいなのだこの子! 月影くんと全然似てないくりくりの二重に彫の深い顔、月影くんと全然違うくりくりの栗色の髪、お人形みたいに白い肌、全部白人特有のものだ。松隆くんの情報も聞いてはっとしていると、月影くんは頷いた。


「あぁ、数年ぶりなんだが、叔父が日本に来ているんだ。恋人夫婦なんでな、今日は叔母と二人きりで出かけるというので俺が預かった。紹介する、七歳の月影Leliaだ」

「れりあ?」

「違う、Lelia


 月影くんの口からはカタカナではない発音が飛び出た。桐椰くんが反芻しても同じ調子で繰り返すので、私と桐椰くんは少し顔を見合わせる。しかし、そこはやはり桐椰くんは子供好きなのか、「まぁいいか」とテーブルを離れてその子の前に屈み直した。


「レリアちゃん? お兄ちゃんの友達のリョウだよー」


 そして笑顔! 桐椰くんってあんなに可愛く笑うのかと無関係な私が愕然とするくらい人懐こい笑顔。確かに桐椰くんは御三家の中で随一──いや唯一愛想がいいけど、あくまで相対的な問題で、揶揄えば反応があって可愛い、程度のものだ。まさか、小学生相手に目線を合わせて満面の笑みを浮かべるまで だとは。


 が、月影くんの背後にいる従妹、ぷいっと顔を背ける。無視だ。ガンッ、と桐椰くんがショックを受けているのがその背中だけで分かる。


「なに、人見知りなの?」

「いやそうじゃない」


 興味なさそうに頬杖をついたままの姿勢を崩さない松隆くんに対し、月影くんは首を横に振った。


「名前の発音が悪いと振り向かない」

「まごうことなきお前の従妹だなおい!」

Lelia


 桐椰くんの激しいツッコミを無視し、月影くんは従妹を見下ろした。確かに月影くんのよく分からない発音だと反応して顔を上げる。


「コイツらにお前の名前の発音は難しい。レリアで我慢してやれ」

「…………」


 そしてこっくりと頷く。どうやら日本語は分かるらしい。桐椰くんの横顔は無視の悲しみが増した。


「日本語通じるのかよ……」

「俺がフランス語を喋れるとでも?」

「今更お前が何できても何語喋れても驚かねぇよ」

「まぁ多少は分かるが」

「しかも喋れるのかよ!」

「従妹がいるんだ、当たり前だ」


 もうどこから何をつっこめばいいのか分からなかった。私はジュース片手にぽかんとしてるだけだし、松隆くんは唖然とはしていないものの我関せずでじろじろと月影くんと従妹のレリアちゃん(でいいんだろうか)を見ているだけだ。


 さて、そもそも今がどういう状況だったかというと、「家にいると息が詰まる」と吐き捨てた松隆くんの招集により土曜日にも関わらずわざわざ四人でカフェに集まっていただけだ。特に予定はなかったので呼ばれるがままに来たのだけれど、月影くんが急に「少し遅れる」と言うので、珍しいねー、なんて話していた。


 すると、これだ。取り敢えず四人掛けのテーブルだったので、七歳の子が座れるようにと桐椰くんが椅子を増やした。そしてお誕生日席は遠くてよくないという桐椰くんの意見のもと、レリアちゃんの左右に松隆くんと桐椰くん、その向かい側にそれぞれ私と月影くん、という配置になった。


 そう、この中で確実に一番子供を苦手な松隆くんがレリアちゃんの左隣だ。案の定、松隆くんがレリアちゃんに話しかける気配はなく、それどころか顔を向ける気配すらない。せいぜい月影くんと「駿哉、もうお昼は食べたの」「あぁ、十二時に」と話しているだけだ。代わりに桐椰くんがわざわざメニューをとってレリアちゃんの前に広げる。


「レリアちゃんも食べた?」

「食べた」

「じゃあケーキでも食う?」


 そしてメニューを一緒に見ながら「何が好き? イチゴとかチョコとか」「イチゴ」「じゃあイチゴのショートケーキかなー。イチゴのジュースもあるぞ」と甲斐甲斐しく世話を焼いている。


 そして、月影くんもレリアちゃんの面倒を特に見ようとはしない。ガン無視だ。なんなんだこの二人、と顔を見比べ、とりあえず松隆くんに、テーブルを挟んでこそっと小声で話しかけた。


「あの……、リーダー、レリアちゃんとなにか話しましょうよ」

「俺子供無理だから」

「そんな一言でばっさりいかなくても……」

「遼が面倒みるから大丈夫でしょ」


 この似非王子……! 非難の目を向けるも松隆くんは無視。その間にも桐椰くんが(あくまで月影くんがではなくて桐椰くんがだ)レリアちゃんのケーキを頼んで「いつから日本来てんの?」「せんしゅう」「どっか行った?」「Temple!」「浅草寺に行ったらしい」「そっかぁ、デカイ提灯あったろ、こんなの」「Mamanが買ってくれた!」「ん? あぁ、キーホルダーか」なんて楽しそうに話している。桐椰くんが金髪だから親近感があるんだろうか、最初は無表情だったレリアちゃんが既に笑顔。因みに月影くんはただの翻訳係。預かるの意味を「行動を共にする」くらいにしか思ってないようだ。


「つかお前ら、自己紹介とかしないの?」


 そして、桐椰くんの魔の台詞。松隆くんの顔が「余計なことを……」と言いたげに一瞬だけ強張った。隣に座ってたら脇腹でも小突いてしまっていたかもしれない。


 ただ、さすがの松隆くんは子供の前でも取り繕いはするらしい。表情の変化があったのは一瞬だけで、すぐさまレリアちゃんに向けてにっこりと余所行き笑顔を張り付けた。


「松隆総二郎。レリアちゃんの従兄の幼馴染」

Trop long.

「え?」

「名前が長すぎるらしい」


 そしてバシッと一言不満げなコメントが返ってきた。フランス語の分からない松隆くんが眉を顰めれば、月影くんが翻訳し、桐椰くんも頷く。


「別にフルネームじゃなくていいだろ、ただでさえお前の名前ゴツイし。ソウでいいじゃん」

「ソウだけは反って言い難いだろ」


 イラッ、と松隆くんのこめかみに青筋が浮かんでいる。多分こういう対応が苦手なんだろうな……。因みにレリアちゃんは「ソウ?」「うん、アイツはソウ」と松隆くんそっちのけで、あろうかとか月影くんもそっちのけで桐椰くんと話している。どっちが従兄だ。


「で、あっちのお姉ちゃんがアキ」

「アキ?」

「うん、アキだよー、よろしくね」


 笑顔を作るなんて難しくないはずなのに、子供相手には引きつった。レリアちゃんは「んー、アキ……」と少し考え込む。呼びやすいはずなのになぜ困るのか。


「アキはだれの奥さんなの?」

「ん?」

「俺」

「違うだろ!」


 何の話かな、と凍り付いてしまった笑顔のまま更に首を傾げれば、松隆くんが間髪入れずに謎の回答を口走った。子供無理だから俺は話しませんと言わんばかりにひたすらコーヒーを啜っていたくせに、こういうときだけ話に入ってくる。よくない、よくないぞリーダー。


 松隆くんと桐椰くんの口から別々の回答を聞いてしまい混乱したのか、純粋なレリアちゃんは不思議そうに首を傾げている。月影くんは安定の無視なので、桐椰くんが「ソウは嘘つきだから気にすんな」とフォローを入れていた。このくらいの年の子は、私達の年代の男女グループがあるとどこかがカップルと思ってしまうのかもしれない。


 とりあえず、と松隆くんは立ち上がる。


「駿哉、交代」

「何がだ」

「席だよ」


 ……松隆くん。本気で子供無理なんだな。


 多分その感想はレリアちゃん以外の全員が共有した。月影くんは面倒を見ないとはいえ、一応従兄だ、そのほうがまだマシだと桐椰くんも思ったんだろう、「分かった、お前はもう何も喋るなよ」と言い聞かせる始末だ。


 そうして席替えがなされた結果、隣でもなくなった松隆くんはいよいよレリアちゃんに構わず、月影くんが合間合間に翻訳を挟みながら、桐椰くんが一層レリアちゃんの世話を焼くことになった。正しい発音じゃないと振り向かないなんて初期設定はどこへやら、「レリアちゃんはイチゴ好きなの?」「好き! 日本のイチゴはあまいの!」「イチゴソースはいいの」「chocolatもすき」「チョコレートのことだ」「じゃあお兄ちゃんのケーキ食べる?」「たべる!」と大変ご機嫌だ。それどころか桐椰くんのお皿のチョコレートケーキを食べながら「シュンはいっしょにいてもしゃべんないの! リョーはたくさんしゃべってくれるね!」なんて言い始めて月影くんのネグレクトが発覚。白い目を向けると、月影くんは仕方なさそうに肩を竦めた。


Leliaは日本語学校に通っているので日本語も喋れるが、興奮したときなど咄嗟に出るのはフランス語でな。日本人の大人と会話するにはまだ難しい単語が多すぎる」

「つまり月影くんの文語チックな話し方との相性が最悪ということですね」

「その通りだ」

「シュンの話やだ。難しい」


 だろうな、と私達は再び同じ感想を共有する。そもそも月影くんは日本人でも小学生相手に一体何の話をするのか謎だ。


 とはいえ桐椰くんもそんなに小学生相手の話題なんて持ってないのでは……、とレリアちゃんを見ると、桐椰くんが差し出したノートに鉛筆で落書きを始めていた。「Maman et papa!」なんて台詞には母親と父親を示すらしい単語が聞こえたので、多分両親の似顔絵を描いているんだろう。桐椰くんは「上手上手」と頭を撫でてあげている。なるほど、お喋りだけではなくお絵かきもさせようと。


 因みに隣の松隆くん、無視してコーヒー。絶対もうカップにコーヒーないよね。


「……お前さぁ、少しは喋れよ。なんのための愛想だよ」


 数十分後、流石の桐椰くんも呆れたのか、最早レリアちゃんを膝の上に乗せながら松隆くんを咎める。ムッと松隆くんは眉間に皺を寄せた。


「何を喋ればいいんだよ」

「なんでもいいんだよ」

「とか言って、なんでもはよくないんだろ。フランスねぇ、まだ文学も芸術も分からないだろ?」

「松隆くんって話題広いと思ってたけど子供の前じゃ役に立たないね」

「人を役立たずみたいにいうのやめてくれる?」


 でも実際、レリアちゃんの前では話すことないみたいだし……。かくいう私も子供相手に何を話せばいいのか分からないので、完全に桐椰くんに任せきりだ。それでレリアちゃんも満足げなのだから桐椰くんの母親力が凄い。


「そういう桜坂は。子供無理なの?」

「無理とか言わないでくださいよ、何を話せばいいのか分からないだけです」

「それが世間的に言う“無理”じゃない?」

「松隆くんは生理的に受け付けないって感じじゃん……」

「でも子供好きじゃないほうが将来子供を持った時に可愛く思えるって言うじゃん。ギャップに落ち込まないで済むから」

「いまそんな話してないですよリーダー」


 レリアちゃん自身は松隆くんに話しかけてもらえなくても一向に構わないらしく、桐椰くんの膝の上で楽しくお絵かきを続けている。なんなら時々桐椰くんに「mamanと見た!」と何の絵かを説明しているので、どうやら桐椰くんに構ってもらえさえすればいいようだ。桐椰くんもよしよしと構ってあげてはいるものの、その目は「何か喋れよ」と言っている。


 それでも松隆くんは唇を引き結んでいるままだ。もうカップの中身がないのは見えてしまった。


「……れ……レリアちゃんは、」


 そして辛うじて名前を呼ぶも、レリアちゃんは無視。初期設定に戻った。松隆くんの唇がひくっとひきつる。これは桐椰くん以外には懐いていないだけなのでは、と松隆くんを庇うべく私も身を乗り出す。


「レリアちゃん、お絵かき上手だね。お絵かき好きなの?」

Oui!

「イエスと同じ意味だ」


 ……松隆くんの顔がますます引きつった。私には返事をする、ということは松隆くんにだけ返事をしないということだ。しかも桐椰くんの膝の上に乗ってご機嫌なんだろう、私には満面の笑顔を向けてくれた。ついでにフランス語っぽい鼻歌交じりで桐椰くんのノートを埋めている。


「レリア? ソウがレリアと喋りたいって」


 松隆くんがリトライをしようとしないので、桐椰くんが栗色の頭を撫でながら促す(いつの間にか呼び捨てるほど仲良くなってるけど気にしない)。松隆くんは「別に喋りたいとは言ってない」なんてボソッと呟いた瞬間「痛っ」と顔をしかめる。机の下で足が動いた気配があったので桐椰くんが蹴ったんだろう。


 が、レリアちゃんは首を横に振る。


Non.

「ノーと同じ意味だ」

「なんで?」


 そして子供が無理だと言ってばかりのくせにいざ拒否されたら気に入らないらしい松隆くん。レリアちゃんはぷぅっと頬を膨らませた。そんな顔まで美少女だ。


「ソウ、怖い」


 あ、分かるー、なんて、やっぱり私達は同じ感想を共有する。動物には必ず逃げられるという松隆くん、やっぱり子供とか純粋な子からはその腹黒さというか、声に出てる以上のことを考え過ぎているのが伝わるんだろうな……。


 レリアちゃんはにこっと嬉しそうな顔で桐椰くんを見上げる。


「リョーは優しくて好き!」

「そっかそっか、お兄ちゃんもレリア好きだよー」


 桐椰くんの顔に“なんだこの生き物、可愛い”と書いてある。愛想がいいとかじゃなくてただただメロメロなんだと気づいた。そして、なんだか既視感があると思っていたら、女の子に接する彼方と同じ笑顔だ。なるほど、彼方は女の子にメロメロ、桐椰くんはちっちゃい子にメロメロ、と。


「でも、レリア、シュンとけっこんするから」

「え」

「は」

「しないが」

「こんな小さい子にマジレスすんじゃねぇよお前」


 そしてとんでもない台詞に私と松隆くんの口から素っ頓狂な声が出た。桐椰くんが平然としているのは、こういう年の子にありがちだと分かっているからだろうか。


「でも駿哉の話、つまんないんじゃないの?」


 そして松隆くん、謎のプライド発揮。桐椰くんのことが好きで月影くんとは結婚したいくせに、この俺を怖いの一言で一蹴するとは何事だ、とでも聞こえてきそうな横顔で、思わず笑ってしまう。


「シュンの話は大きくなったらわかるもん」

「いや大人にも分かりにくい言い方するよコイツは」

「シュン、たくさん遊んでくれるもん」

「あんまり喋んないって言ってたよね?」

Tu m’embetes.


「うるさいそうだ」

「なんなんだよ俺だけ!」


 ついに松隆くん憤慨。レリアちゃんはそれでもなおぷいっと顔を背ける。ここまで不人気な松隆くんは初めてだ。


「まぁまぁ松隆くん。子供相手にむきになっちゃだめですよ」

「そうそう。俺達と話すのと同じテンションで喋っても嫌われるだけだって」

「駿哉は嫌われてないだろ」

「一昨年フランスに遊びに行ったときに一目惚れされたからな」

「顔がいいなら俺でもいいだろ」

「シュンは優しいもん」


 聞いていたらしい。確かに、松隆くんは最初から“子供無理”の一点張りだったもんね。桐椰くんも、うんうんと頷く。


「最初から顔に無理って書いてあったもんなぁ。子供はそういうの敏感なんだから駄目だぞ」

「七歳の女にデレデレになってるお前もダメだろ」

「別にダメじゃねーだろ! 可愛がってるだけじゃねーか!」


 人を犯罪者みたいに言うな!と桐椰くんは顔をしかめるが、松隆くんは腕を組んで舌打ちでもしそうな勢いだった。


 結局、松隆くんとレリアちゃんは殆ど喋らず。帰りながらもレリアちゃんは桐椰くんがお気に入りで桐椰くんと手を繋いでいる。月影くんと結婚するとはいえ、手を繋いでもらえないのは分かってるんだろう。なんだか可哀想だ。


 そんな後ろ姿を見ながら、松隆くんはまだ腹立たし気だ。


「なんで駿哉はよくて俺は駄目なんだ」

「レリアちゃんが言ってた通りだよ、松隆くんは腹の内が読めないから怖いんだよ」

「駿哉が何も考えないで喋ってるわけないだろ」

「考えてる内容に問題もあるんですよ、リーダー」

「まぁ別に子供無理だからいいけど……」


 とかなんとか言いつつ、二人に負けてるということが気に食わないのが伝わってくる。子供だな、松隆くん。


 レリアちゃんはといえば、ご機嫌を極めて歌を口遊《くちずさ》んでいる。フランス語なので何の歌かは分からない。桐椰くんと月影くんは「妹いるっていいよなぁ」「夕飯までに帰ると伝えてあるから連れて帰られては困る」「それがなかったら夕飯くらい作ったんだけど」なんてほのぼのとした会話をしている。桐椰くん本当にどこまでも母親なんだな。多分娘ができたら溺愛するタイプだな。


 分かれ道に差し掛かれば、桐椰くんは名残惜しそうにレリアちゃんに手を振っていた。でも桐椰くんが「ちゃんと手繋いで帰れよ、攫《さら》われたらどーすんだ」と月影くんを説得したので、レリアちゃんは月影くんと手を繋げでご満悦。松隆くんは、手を繋いでないのは俺の意志ですとでもいうようにポケットに手を突っ込んでいた。


 私を送りながらも、桐椰くんは「あーぁ、可愛かったなぁ」とぼやくばかりだ。


「桐椰くん、あんなにちっちゃい子好きだったんだね。知らなかった」

「まぁちびっこは好きだけど、その中でも可愛いぞあれは。変に生意気でもないし」


 とても駿哉の従妹とは思えない、と桐椰くんは失礼な感想と共に頷く。でも確かに、見た目も中身も月影くんとは似ても似つかなかった。はっきりと物を言うところは似てるけれど。


「松隆くんのフラれっぷり、楽しかったね」

「アイツは昔から動物とちびっこに好かれない。あの笑顔の裏が怖いんだろうなぁ」

「下手な女子よりよっぽど利口じゃないですか、動物とちびっこ」

「そりゃそうだろ、アイツの笑顔上手過ぎるから。本能じゃないと見抜けないって」

「確かにぃ」


 あはは、と、珍しくほのぼのした午後を過ごした土曜日だった。








「ねぇ月影くん、今日の松隆くん不機嫌なんだけど。まだレリアちゃんの件引きずってるの?」

「帰りにダメ押しをされてな」

「ダメ押し?」

「桜坂のことが好きなのは分かるが、総は怖いから駄目だと言われていた」

「…………」

「顔だけは好きだとも」

「…………」

「なんで子供まで俺の地雷踏みにくるんだろうね」

「こ、子供って残酷なところあるもんね!」

「誰の奥さんか──つまり誰の彼女か聞いたときも、総の彼女ではないことだけは分かったらしい」

「だからうるさいんだよ!」

「……元気出して松隆くん」

「本気で同情するのやめて」