就職先

 そしてリオンに追い付いた帰り道。

「リオンって、今いくつだ?」

 会ったときから抱えていた疑問を口にする。ついでに懇親も兼ねて。

「貴様には関係無いだろう。言う必要はない」

 二人称がまた貴様になっている。名前を呼んでほしいなぁ。

「良いじゃん。別に言ったからって減るものでも無いし。ちなみに俺は十六歳。会ったときも言ったっけ。ほら、俺は言ったぞ」

 なーなー。と繰り返し聞くと、ため息をつきながら答えてくれた。うーん、やっぱこれくらいしつこくないと答えてはくれないか。柄じゃ無いし逆に嫌がられたくはないんだけどな。

「ハア………十五だ」
「ちなみにマイは十四歳。いっこずつ並んだな」
『ソラの方が年上なんですね』
「そうだな。敬っていいぞ年少者」
「僕だって三ヶ月後には十六になる! そんなに変わらん!」

 軽い言葉でシャルティエに言っているとリオンにまた怒鳴られた。年下扱いは嫌いか。しかし坊っちゃん。坊っちゃんて。出会ったときからだが、笑いそう。

「あーうん悪かったって坊っちゃん。同い年な。大して変わらないな。うん。怒鳴らなくても聞こえてるから、坊っちゃん」
「貴様が坊っちゃんと呼ぶな!!」

 そんなに嫌か。俺でも嫌だが。

「名前を呼んでくれたら止める。いつまでもお前とか貴様とか呼ばれてると悲しいからさ」

 はい、りぴーとあふたみーソラ。
 促すように右手を向けると心の底から面倒臭そうな顔。それはそれで腹立つぞコラ。

「呼んでくれないならずっと坊っちゃんでいく。いいんだな坊っちゃん」

 俺としては段々楽しくなってきたから構わないんだけども。どうよ?
 待ち構える俺。はーい私もー! と便乗するマイ。二対一では分が悪いと判断したのかまたしてもリオンは深いため息を吐いた。幸せ逃げるぞ?

「……ソラにマイ。これで満足か」
「ばっちりー。初対面で認められないのは十分承知。信用してもらえるように努力するからさ、名前だけはよろしく頼むな」

 にしても三ヶ月、後三ヶ月か。リオンが十六歳になれば、いつ物語が始まってもおかしくない。そんなに幼く見えなかったから同じくらいとは思ったが、意外と短いな。その前にリオンやマリアンと仲良くなって、ヒューゴに取り入って……。ソーディアンとそのマスターをヒューゴが簡単に手離すとは思わないが、利用されるだけのつもりなんて更々ない。
 未来を知っている身としてどこまで関わって良いのか解らないが……ま、そこは後はマイや雫と相談するか。

「名前なんて、僕には意味のないものだ」

 考えに耽っていた俺は、リオンの呟きには気づいていなかった。


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