「完全なる人員不足ですな。」


うーむ。と等活地獄にある不喜処の一角で書類片手に唸る。年々増していく亡者の数にたいして、微妙に足りない人手。
ここ数十年は慢性的な人員不足なのだが、それがここ数年で一気に加速していて大変困っている。色々と現世ではあるんだろうが、非常に困る。
あと人と言っても此処は鬼ではなく、主に動物の獄卒がいる。その動物達が微妙に足りず、普段此処にはいない私が見張らなくてはならない事態になりつつある。これも非常に困る。
そもそも私の本業は亡者と戯れることではなく、怪我した動物などを診る医者だ。病院勤めの筈なのだ。決して不喜処の亡者達が逃げ出さないように監視するのが仕事ではない。
それに何故か現在不喜処の人事担当みたいな位置にいるが、当初は書類仕事のみの契約のはずだった。
気がつけば人事担当どころか不喜処のトップ的な位置に躍り出てきてしまっている。主任は別にいるはずなのだが、主任が私に相談し始めてから現在に至っている。
あと何処かの鬼人事が裏でてを回したに違いない。
何時だったか。鬼人事に「貴女の能力を埋めておくのは勿体無いですからね。」と表情の読めない顔で言われたので確実に絡んでる。あの鬼人事マジで鬼だ。
その勿体無い精神は、別のところに発揮してほしかったがそれを告げたが最後。きっと医者としての道は閉ざされてしまう。
あの鬼神はマジでやりかねないから、なにも言えない。あのおにこわい。
各庁の補佐官たちより仕事量は少ないみたいなので文句は言えないが、休みというものが最近ない気がするのでそれだけは意義を申し立てたい。
病院の方が絶対今の時期は暇だからそっちに帰りたい今日この頃。

「葉月様。」

「はぁい?」

「この書類もお願いします!」

ドンッと書類の山が増える。
一枚だけ上の紙を手元に手繰り寄せれば、何故か動物文字が目に飛び込んでくる。これはおかしい。なぜこれが私のところに届くのだろうか。
書類の確認は私の仕事のうちに入るが、主に今は重要書類だけのはず。報告書は私の下の奴の仕事で、重要そうなのを回してくるはずなんだがなぁ。
そうしなきゃ私の負担が減らないし、なにより不喜処の新人さん達が育たない。動物の文字を覚えてもらわないとこれから先やっていけないからな!
同じに見えるけれど微妙に形が違うから頑張れば見分けがつくようになる。というか、見分けがついて初めて一人前になるのだ。
ので、さっき持ってきた獄卒は見つけ次第、厄介な仕事を与えよう。
たまたま偶然。そう、丁度厄介な仕事が一件舞い込んできているのだ。
この書類を私がするのであれば間に合わないので、視察に来る補佐官殿の相手をしてもらおう。体は動かしたいがこんなに書類の山を放置して行けるはずがない。私、これ終わらせたら病院でお仕事あるからそもそも無理だし。
あと一時間ぐらいで奴は視察にこちらの方に来るはずだし?等活地獄全体を案内させようそうしよう。

「さてさて。そうなれば、私は書類とにらめっこでもしますか。」

その辺の獄卒にさっきのやつを向かわせるとを話して、仕事再開といきますか。奴の視察に付き合うより、書類作成の方が遥かに気が楽だ。
それに人員不足は現世にでも行ってスカウトしようか。最近の動物園はいろいろな種がいるから、スカウトし放題だ。









「ねー、夜叉一さんはどんな動物がいいですか?」

「え、あ、はい?」

「私はね、そろそろこの不喜処にも熊とか虎とか必要だと思うのよね。」

「……それは、人材で?」

「若しくは阿鼻地獄から引っこ抜いてくるか。」

ヒイッと夜叉一さんが飛び上がった気もするが、見なかったことにしておこう。
本当、いい人材がいなければ恐竜でも見繕って暫くいれておこう。きっと許可は下りないが提案ぐらいは怒られない筈。








そう考えていた数時間後には人員不足は一応解消された。
いい新人さんだといいな。




ALICE+