そのときの私は判断力が鈍っていた。
久々の連休で浮かれに浮かれて、ビールやらチューハイやらを飲みつつ借りてきた映画に文句を言っていたところまでは記憶にある。
ホラー映画をBGMに眠たくなったのも覚えている。
だが、缶ビール片手に真っ白い部屋で目の前に神々しい人がいて、ひどく真面目に演説しているのは何故だ。
二日酔いになりつつある頭を抱え、そっと目の前の人物を見る。だが残念なことに、神々しすぎて直視できなかった。
取り敢えず演説内容を簡単に説明すれば、選ばれたのでちょっと異世界に行ってそこで一生を終えてほしいと言ったことを、長々と1から10まで丁寧に説明してくれている。
まあ、あれだ。
世の中に出回っている異世界テンプレの事故死を除いたものを説明してる感じだ。
何故選ばれたのから始まり、二度と世界には戻れない、少し特典つけときますやらなんやら説明してくれている。
かれこれ2時間くらい懇切丁寧にあとでクレームが来ないように願っているかのように、それはもう熱心に説明してくれているのだが。
私は缶ビール片手に正座でこの場にいるのだ。
しかもガンガンと頭がいたくなってくるし、気持ち悪くなってきている。これはダメだ。浮かれに浮かれて何時もよりハイペースで飲んだせいで、完全に二日酔いになってきている。
頭を片手で押さえつつ、片手の缶ビールはぐしゃりと握りつぶす。握りつぶした缶は床におき、深く息をすう。
「わかった。その世界にいくから。演説やめて。頭にひびく。」
そう、その時の私は完全に判断を間違えた。
その世界に必ず行けとは目の前の人は言ってなかったこと。
行きたくないと言えば返してくれるということに気がつけなかった。
そしてあの言葉を聞き逃していたことに。
「この世界の人間は、彼の世界の勇者には居心地のいいものになります。決して勇者に見つからぬように。見つかっても名を告げぬように。あの勇者は、……。」
あの勇者は世界を一度救い、神の手違いで二度目の世界を救うことになってしまった者。
故に一度目に出会うことのなかった貴女に敵意、若しくは執着。どちらかを向けるでしょう。
気を付けなさい。彼の者は一度目の記憶を持っています。
その言葉を思い出したのは、勇者の手が私の頬に触れたときだった。
何もかも手遅れになったその時だった。
そう、私の選択は100年前に2度も間違えていたのだった。
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