まちづくりによる都市の変化は、大きく二つに分けることが出来る。ひとつは都市化、もうひとつは脱工業化である。都市化とは、一言で言えば近代都市計画が直面した都市の構造転換であり、19世紀末から20世紀初頭にかけて新たに台頭してきた新中間階層、日本でいうとサラリーマン階層の要求を満たす市街地を形成してゆくことを課題としていた。一方、脱工業化は、21世紀特有の新しい社会や生き方を見つけることを目標とし、それによって今世紀を支える新しい社会階層に支持される都市計画の仕組みになると考えられている。
18世紀から19世紀にかけてイギリスで起こった産業革命による工業化は、様々な都市問題を引き起こした。工場からの排出物によって大気汚染や水質汚濁などの公害が発生し、マンチェスターやバーミンガム、リヴァプールなどの新興都市への人口の集中によって、不衛生な居住環境が形成され、悪疫が流行したのである。このように、都市化や工業化には環境問題のイメージが付きまとう。技術の革新によって便利な社会になる一方で、環境汚染、自然破壊が伴う今日我々が抱える最大の課題である。京都議定書やパリ協定は、温暖化による気候変動に関する国際的枠組みであるが、自国の発展のためには工業発展は欠かせないという国も開発途上国を中心に多数存在するため、全世界挙げての協力体制はいまだ形成されずにいる。都市化と環境問題は、切っても切れない関係なのだと思う。
エベネザー・ハワードは『明日の田園都市』という著書の中で、田園都市論を提唱した。農村と都市の利点を融合させた田園都市をつくろうというものである。これに関連するまちづくりを行ったのが箕面有馬電気鉄道(現・阪急電鉄)の小林一三である。彼は電車沿線での住宅地の開発、割賦販売を行い、また沿線への学校誘致を行った。これによって朝は都心から郊外へ、夜は郊外から都心への電車の利用者を増えた。さらに、阪急百貨店やアミューズメントパークを建設することで、昼間の郊外から都心、休日の都心から郊外の利用者も増加させた。こうして都市の利点を享受しながらも緑に囲まれた農村での生活を送ることができる田園都市が完成した。農村と都市のいいとこ取りは、後に伊藤洋志とphaが発表する『フルサトをつくる:帰れば食うに困らない場所を持つ暮らし方』にも関係してくるのではないかと思う。彼らは田舎と都会の両方に家を所持しているようだが、それぞれの良さを認め、その両方を取り入れるという点では同じなのではないだろうか。都会の便利さ、田舎の暖かさはどちらも捨てがたいもので、それを同時に得られる生活が一番理想的であるのではないかと感じる。
脱工業化社会とは、D=ベルらによって提唱された、エネルギーを基礎とする工業に代わって、知識・情報。サービスなどに関わる産業が重要な役割を果たす社会を指す語である。文化や芸術が生み出す過程での「想像力」こそが、都市や地域をよみがえらせる原動力であるとすし、芸術文化などに代表される「創造性」が、脱工業化釈迦において新しい価値をもたらし、活力につながるという考えを基に提唱されたのが、創造都市(Creative City)という概念だ。これに関連して、UNESCO Creative Cities Networkでは「グローバル化の進展により固有文化の消失が危惧される中で、文化の多様性を保持するとともに、世界各地の文化産業が潜在的に有している可能性を、都市間の戦略的連携により最大限に発揮させるための枠組みが必要」という考えに基づき、世界各地の都市の文化の振興を図ろうとしている。これは、前回までの授業で学んだ、中国の少数民族の生活にも関係してくると考えられる。外の文化(先進技術)を程度取り入れながらも、独自の文化を大切に守り続ける。そしてその伝統技術で作られた物品を外の会社と連携して都市で販売し、それに興味を持った観光客が観光に訪れ、それらによって経済が循環する。この循環は、今日最注目されている民族文化の重要性、可能性を私達がしかと感じ取っていることの表れではないかと思われる。
脱工業化と関連して、田舎での新しい生き方が重要視されてきている。都市化が進むにつれて田舎での仕事が減り、仕事がないからといって若者が都市へ出て行く。これは仕事減少の悪循環だと考えられる。その改善策として注目されたのが、仕事を自分で持ち込む、つくるというスタンスである。これには、職人型移住・丁稚方移住・野人型移住の三種類があり、技術や資格、能力を持つ人はもちろん、これから仕事を学ぼうという人にも可能な暮らし方だ。自分が長野県の田舎出身ということもあり、田舎での暮らしに通目が集まっているのはとてもうれしく感じる。しかし、昔は精密機械産業として有名であったが、時計やオルゴール、ミクロサイズの製品などの会社が次々と倒産していると聞く。このようにして産業空洞化が進み、仕事が少なくなり、若者が減り、高齢化と過疎が進む地域が形成されていくのだと考えると、
ジュリエット・Bは著書『浪費するアメリカ人』の中で、がむしゃらに働いたり、金銭的・物理的な成果を求めたりせず、ゆとりのある人生を楽しもうとすることを意味するダウンシフトという生活を紹介している。これは、職住近接、自給自足の田舎での生活に通ずるものがあり、日本でも街や市を挙げてこれを後押ししている地域もある。地方移住者に手厚い補助がつく制度などは、これの最たる例であると思われる。
新たなまちづくりとして、地域の人間同士で協力し合って社会を再構築、活性化指せようとする動きもある。大阪には、「大阪を変える100人会議」という団体があり、大阪における様々な社会課題解決に向かう社会的事業者が、行政や企業・地縁組織と有機的な協働を深めるためのプラットホームを目指し、より良き市民形成に貢献しようと活動している。