ゆうやけこやけ

今日は早めに部活が切り上げられたから、聖臣くんの練習を初めて見に行った。
強豪校である井闥山の中でも彼のプレイは目立っていて惚れ惚れするほどかっこいい、思わずうっとり見つめてしまった。

けど彼の言動が私が知ってるのと違ってすこしびっくりした。部員と会話するときの彼は結構素っ気なくて意外と強気な言動が多い。
きっと自分のバレーに対する自信に由来するものだと思うけど、普段とは違う男くさい様子に私はだいぶやられた。
それと同時に基本的に優しくおとなしい普段の彼も思い出し、やっぱり先輩で異性の私には遠慮するところがあるのかな…と寂しくもなった。



「あ、佐久早の彼女さんだ!」

練習も終わり聖臣くんが着替えるのを待っていると先に出てきたまろ眉が特徴的な男の子に声をかけられた。

「佐久早待ちっすか?」
「うん、そーだよ」
「え〜いいっすねぇ、俺も練習終わりに一緒に帰ってくれるかわいい彼女欲しい〜」

聖臣くんと違ってかなり社交的な子らしい。
ちょっと話し込むと古森と名乗った彼は同じ二年生で聖臣くんと親しいことがわかり、私の知らない彼のエピソードをいつくか披露してくれ、なんだかほくほくとした気分になった。



突然とんっと何かがぶつかる音とともに古森くんがよろけた、驚いてそっちを見ると、聖臣くんがふくれっつらで立っている。古森くんに体当たりして間に割って入ってきたらしい。

「うおっ!んだよ〜、佐久早。お前意外とお子ちゃまだな」
「うっさい、お前には関係ないだろ。早く帰れ」
聖臣くんは思いっきり眉を顰めた。

「はいはい、お邪魔しました〜」

そう言うと古森くんは私にペコっと軽く頭を下げてから去っていった。



私たちも駅に向かって歩き出す、唇をとんがらせた聖臣くんは依然としてご機嫌ナナメだ。

「聖臣くん、もしかしてやきもち?」
「…」

返答はないけど彼の方から手を繋いできた、これは肯定だ。

「もぉ〜かわいいなぁ…聖臣くんのお話してただけだよ!」
「……先輩の尻軽、ビッチ」
「はぁ?」
「男にあんな簡単に尻尾振るなんて信じらんない」

マスクの下でぶつぶつと文句を言い続ける彼に対し別に尻尾なんか振ってないと返しながら、私といるときの彼は結構やきもち焼きで甘えたなことに気づいた。
部活ではバレーに真摯に向き合う分だけプライドも相応にあるだろうし、仲間とはいえ他の部員は競争相手という気持ちも当然あるだろう、そんな緊張状態をといて私には気を許してくれているのかな、と思うと頬が自然に緩んだ。

「なんですか」
「んーん、聖臣くんのこと好きだなぁって」
「…そんなんじゃ誤魔化されないから」

口ではそう言いながら指を絡め直してすりすりとしてきた彼はやっぱりかわいい。
ご機嫌治ってんじゃん、と思って笑ってしまった。

Serenissima