Happy Valentine

「あっ」
学食で一緒に聖臣くんとお昼を食べていた。
彼が飲み物を買いに席を立ち、ぽつんと残された彼のスマホがいつもと少し違った気がしてなんとなく手に取ったのだった。



「聖臣くん、ハッピーバレンタイン!」
「ありがと…ってこれ市販のやつじゃん」

私はMARVELヒーローのチョコを手渡した。
意外にも聖臣くんはあからさまにゲンナリとした様子を見せる。

「えー、だって手作り食べてくれるかわかんなかったんだもん」
「食べるに決まってんだろ、逆になんで作ってこないんだよ。」

来年は手作り、と不機嫌そうに言って聖臣くんはさっさと次の授業に向かってしまった。
一応彼のことを想って選んだつもりだったけど、それが裏目に出てあまり喜んでもらえなくて少し残念だった。



手に取ったスマホをよく見ると、昨日渡したMARVELチョコの包装紙が聖臣くんのスマホケースにはさまっていた。スマホの裏側でちっちゃなスパイダーマンがポーズをとっている。
昨日は全然嬉しそうじゃなかったけど、こんな包装紙をわざわざ取っておいてスマホケースに入れてくれるなんて…と嬉しくて一人でニヤニヤしてしまった。

「…なに一人で笑ってんの」
「あ、おかえり!これ」
そう言って私は彼のスマホをひらひら掲げた。
「げっ」
「わざわざ挟んでくれたの?」
「お前がちゃんとしたやつくれないからだろ」 とつっけんどんに言う。
「ふふ、ごめんね〜。昨日全然喜んでくれなかったから失敗しちゃったかと思った。」
「別に、お前もちゃんと俺のこと考えて選んでくれたんだろ」
「うん、でも次はちゃんと作るね!」
「期待しとく」

そう言うと聖臣くんは少しご機嫌そうにスパイダーマンを撫でた。

Serenissima