陰翳

臣くんはお風呂上がりのストレッチを欠かさない、それは場所が私の家であっても同じことだ。
ちょっと気の抜けた雰囲気でストレッチに励む臣くんを見るのがお泊まりのときの密かな楽しみだったりする。
立派に鍛えられた男の人らしい体と、おそらく練習でしごかれたからだろうか、疲れた表情を見せる臣くんはちょっといやかなりセクシーだ。


「···なに」
「えっ?」
ストレッチを続けながら唐突に話しかけてきた。
「さっきから人の身体じろじろ見てんじゃん、ど変態」
「何いってるの?見てないよ!」
思わず慌てて目を逸らす、いやこの行動見てましたって白状するのと全く同じでしょ、私。
すると臣くんは私が座ってきたベッドの上にゆっくりと乗りあげてきた。

「ストレッチはもう終わったの?」
「まだだけど、誰かさんのあつ〜い視線のせいで集中できないから」
「ごめんって、もう見ないから」

そう言ったにも関わらず臣くんがベットから引く気配はない。恥ずかしくて顔を見れないが、おそらくこちらをじっと見ている気がする。
すると臣くんはそのままショートパンツであらわになっている私の太ももにすーっと手を這わせた。雰囲気が急にムーディーになって何も話せない。

「いいなって思ったの、お前だけじゃないから」
そういうと臣くんは意外にも性急にキスを落としてきた。どうやら臣くんもお風呂あがりのわたしの様子に当てられてしまったらしい。
意外と単純なところがなんだか可愛らしく思えて首に手を回し熱烈なキスに応えた。 夜はまだ長い。

Serenissima