もしも鬼道の玉の輿に乗るとしたら?


馨「よーちゃんみたいなこと言ってる人がいるよ、鬼道くん」

鬼道「よーちゃん?」

馨「いや、こっちの話……まぁ、全て仮定の話として、真面目に考えてみよう。ていうか、そもそも鬼道財閥の玉の輿って現実的に有り得るの? 鬼道くんが次期社長ってのは決まってるんだろうけど、どう? お嫁さん貰う気ある?」

鬼道「そ、そうですね……今の今まで考えたことはありませんでしたし、父は未婚だからこそ俺を引き取ったわけですが……さすがに二代続けてというわけにもいきませんので、俺が相手を探すことになる可能性は高いですね。あまり打算的な物言いはしたくありませんが」

馨「確かにいろいろ大変だろうからねー、財閥って。じゃあ仮に私が本当に玉の輿に乗って、鬼道くんのお嫁さんになったとしたら、……どうなるんだろう? 社長妻ってどんな感じか全然想像つかないんだけど」

鬼道「俺が社交界などで経験した限りでは、何と言いますか、夫を立てることに徹した妻≠ェ多いと感じましたね」

馨「あー、なるほど。妻の振る舞いでも夫の、もっと言えば会社の評判が変わってくるかもしれないから、下手なことはできないんだね。家でも多分、毎日多忙な夫を労わったりするのが普通なのかなぁ」

鬼道「普段の生活までは解りませんが……でも、もしも俺が社長であり江波さんの夫だとしたら、今のままでも充分だと思いますね」

馨「今のまま?」

鬼道「はい。毎日帰る家で江波さんに出迎えていただけたら、仕事で溜まった疲れもきっと吹き飛ぶんじゃないかと。それに、社長妻の中には実際に業務を支える方もいますし、江波さんなら会社経営もさらっとこなせそうではありませんか?」

馨「け、経営は無理だよさすがに! だったら私は家でひたすら美味しいご飯とあったかいお風呂を用意して、帰ってきた鬼道くんを癒すことに徹したいな。……でもこれだと普通の家庭のお嫁さんと何も変わらない気がする」

鬼道「そもそも社長は俺になるわけですし、俺が良いと思ったらそれが一番なんですよ。俺が江波さんに望むのは、そんな普通の家庭ですね」

馨「うわ、なんかすごいグッとくる発言飛び出した」

鬼道「……一応確認しますが、仮定の話ですよね?」

馨「うん、仮定の話。あ、もしかしてリアルすぎた? 『ブランド品いっぱい買って嗜好品しこたま堪能したい!』とか言うと思ってた?」

鬼道「いえ、そういうわけでは……でも、いっそそこまで突き抜けた江波さんも見てみたいかもしれません」

馨「あはは、私そんな強欲じゃないし、財産目当てで結婚するつもりもないからね。これも仮定の話だけど」

鬼道「解っています、仮定の話ですね」




 |  |  |