大人になれた気がしてた





大人になっても対してそれは変わらなかった。

私は未だに彼の、茅ヶ崎のことを好きでいるし、都合のいい恋人のふりはお互いが社会人になってもずるずると続いていた。

彼が面倒くさがりな性格は昔から知っていたが、会社の飲み会の二次会に誘われてるけど行きたくないから今から来て、と連絡をよこされた時はさすがにこいつ私のことなんだと思っているのかと憤慨したが、それでも彼のことを素直に迎えに行ってしまうあたり、惚れたもの負けだということだろうか。

そして彼を迎えに行き、着いたと連絡してすぐに彼が暖簾をくぐって出てきた。
未だに同僚と後ろにの方で騒いでいる上司達に引き留められているようだったが、彼が私の腕を掴み会社の人達の前へと突き出し、腰に手を回しながら彼女が寂しがりで、迎えにきてくれたのでせっかくですが帰らせていただきますね、といい笑顔で言い放ったので流石に驚いた。

ああ、後ろの彼の同僚であろう女性達の視線が痛い。
彼はそれを知ってか知らずか、私の腰に回った手をそのままに後ろも振り返らずに私の車へと向かう。

彼は自分の職場ではエリート会社員、なんて呼ばれているそうだ。

実際は家にいるととんでもなくヒモのようだし、ゲームオタクだし、口は悪い。十中八九、今回私を呼び出したのは彼がゲームする時間を確保するためだろう、この間イベントがなんだと言っていたのを聞いた。
でもそんな彼を私だけが知っていると思うと少しだけ優越感が生まれるのだ。

彼の同僚達に申し訳ない気持ちもあったが、私の中では茅ヶ崎至という男はそういう男なので今更、という感じはしたが。


そして彼のマンションの駐車場に着いて、彼を見送り私は帰ろうとしたのだが、

「帰るの?」

「帰るつもりだけど…、何かある?」

こういう時もっと可愛い反応の一つでもできればいいと思う、自分があまりにも可愛げがなくていやになる。

「いや、新作のゲーム買ってたの思い出して…」

「あぁ、あれか…」

「ピンクのコントローラーも買ったんだよ?」

どんな売り文句だ、と思ったのは口にしないでおく。

「まぁ少しだけならいいけど…、そういえばさ、何で会社の人の前に突き出してわざわざ彼女です〜なんて言ったわけ?」

ああほら、まただ、可愛げがない。うんざりする。

「…いや、彼女って紹介してた方が今後誘われなくなるかな〜て、それといい加減女性社員の人に連絡聞かれてうんざりしてた」

「羨ましい悩みですね〜背中からさされそう」

「はいはい、刺されないよう気を付けますよ、」

そんな雑談をしながら彼の部屋へと歩みを進めていた。
ゲームをしたら帰ればいい、うん、すぐ帰ろう。


そんな思いはすぐ頭の隅に追いやられるのだが。


そして暫く二人でゲームをしていた。
ずっと幼馴染をやってきたのだ、もちろん性格も合うしお互いの癖なんかも知っている。
二人でいると正直、すごく楽しい。だから帰りづらくなってしまう。

それでも流石に22時を過ぎたから帰らなきゃという思いが増してくる。
私は明日休みだが泊まるわけにもいかなので次のステージが終わったら帰る旨を彼に伝える。

「え、帰るの」

「帰るけど、何?」

数時間前にも同じようなやり取りをした気がする。

「泊まっていけばいいのに、」

「は、流石にそれは背中刺されるよ」

心臓がうるさい。何を言ってるんだこの男は。ああうるさい。

「お前にならいいよ」

「は?本気で何言って、」

さえぎるように、ソファから立ち上がりかけていた私の腕を掴む。

「っ、な、に?」

途端、視界が反、転

私の目の前に広がるのは彼の整った顔と天井。
ソファに押し倒された、と理解するまで時間がかかった。


「ほんとにさ、ゲームするだけだと思った?」

私の腕を抑えつけたまま彼が問う。

「あったりまえでしょ、何、いきなり」

「分かんない?」

「は、分かるわけないでしょ」

「そっ…か」

更にソファに押し付けられる。体重をかけられる。
すぐ近くで香る彼の匂いにくらくらしそうになった。

ああ、もうだめだ。



言葉では抵抗していたが、迫りくる彼を押しのけられずに、顔も背けずに、ただ受け入れようとしていた。



そしてその日から彼との関係は変わった。



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