009



翌朝には、その知らせが広まった。

ラズロ
上の者を以下罪状に於いて流刑に処す。
ガイエン海上騎士団長、グレン・コット殺害の罪

町では皆が噂し、ラズロを極悪人だと言い合っている。この異様な空気の中を、私はふらふらと歩いた。
知らせによれば、今日、ラズロが流刑に処せられる。けれど、一般人は騎士団の船がある港へは立ち入りできない。私は町の波止場へ行って、船を探した。すると一隻の哨戒船が、静かに港を離れた。
騎士団の館の方からは怒号が聞こえる。二度と帰ってくるな、恩知らず――と。

あの船だ。私は確信して、よく目を凝らした。船上に一瞬、赤い鉢巻が翻った気がしたけど、遠すぎてもうわからなかった。
酷い。酷過ぎる。私は崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。勝手に涙が流れて、肩が震えた。

きっとラズロはとても傷ついた。信じてきたたった一つの居場所に裏切られて。でも、彼を信じてついて行った仲間もいる。

それだけが、私にとっても、唯一の慰めとなった。





数日後、閉店時間になって、酒場のドアにかかったプレートを裏返し、看板を片付けていると、ふっと人影が手元を暗くした。
振り返ると、スノウがいた。

「……やあ、久しぶり……だね。」

私は立ち上がって、スノウに向き直った。

「……こんばんは。」

自分でも驚くほど、そっけない声だった。しかしスノウは気にならなかったようで、安堵した。

「……実は、僕、騎士団長になったんだ。」
「おめでとう…ございます。」

その言葉を絞り出した時、自分でも驚くほど喉が詰まって、思わず俯いた。

「ありがとう。……それで、えっと。少しは、考えてくれたかな……?」
「……何ですか?」
「だから、僕のことをさ。僕は、諦めてない。少しでも君に近づきたいんだ。」

私は返事に困ってしまって黙り込んだ。しかしひとつだけ、言葉が浮かんだ。

「そんな……そんな気に、なれません。ラズロさんが、あんなことになって……なのに……あなたは……スノウさんは、どうして平気なんですか?いつも、ラズロさんとあんなに一緒にいたのに……。」
「……!……僕だって、平気なんかじゃないさ!僕は、ラズロだけじゃない……団長も失ったんだ。しかも、ラズロが殺した!信じていたのに……!結局あいつは、仲間じゃない……ラズリルの人間じゃないんだ。あいつが僕らを裏切ったんだよ!」

そう言いきって、泣き出しそうな顔をしているスノウを、私はどこか冷静な気持ちで見つめた。

「……私、ラズリルを出ていこうと思っています。」
「……!?どうして!」

詰め寄ってきたスノウを、私は真っ直ぐに見上げる。

「結局私も、ラズリルの人間じゃありませんから。」

そう言うと、スノウは愕然とした。その隙に私は道具をまとめ、ドアに手をかけた。

「おやすみなさい。……さようなら。」

スノウは返事をしなかった。ドアは静かに閉まった。



 



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