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待ち合わせの喫茶店の、奥の薄暗い席。壁の方を向いて座る、細身だけどしっかりと筋肉のついた、爽やかな雰囲気の男性。
東条君って、こうしてみると結構イケメンだよね。女の子から人気ありそう。
そんなことを思いながら彼の席に近づき、ひょいと顔を覗き込む。
「お待たせ。」
「えっ、ああ、牧瀬か…」
スマホを眺めていた東条君は少し驚いたように顔を上げ、ちらりと周りを見渡してはにかんだ。私は開いている方のソファ席――こういう風にさりげなくソファ席を空けとくところも紳士だなぁ――に座って、ちょっとからかってやろうと思いつく。
「ごめんねー、私一人なの。」
「…え?あ…いやいや、別にそんな…」
光が来ること、ちょっと期待してたんだろうなぁ。光が言ってた通り、動揺してちょっと笑ってるし。
「光、ドラマの撮影でさ。明日まで沖縄なの。」
「へー、そうなんだ。沖縄かあ、いいなぁ」
店員を呼んでそれぞれコーヒーを注文すると、少し冷静さを取り戻したようなポーカーフェイスで、東条君は鞄をあさり出す。
「それでこれ…電話で言ってたやつだけど」
「あ、うん。」
言いながら、東条君が取り出したのは3枚の紙。少し古くくしゃくしゃになったルーズリーフの切れ端だ。見ていいかと断って、その一つを開く。そこにはやはり見覚えのあるあの直線的な字で、侮蔑的な文章がつづられていた。
『勘違いブス』
『消えろ 尻軽女』
『御幸先輩に色目使うな ぶりっ子』
3枚すべてを見終わって、思わずため息を吐く。
「こんなのがいつも靴箱に入ってたらたまんないわ…」
「うん…そうだな」
「でもこれ…1年の時の、なんだよね?」
「うん。」
「ってことは…御幸さんのことを先輩、って書いてるから…同級生の誰かだよね。」
は、と東条君は目を丸くした。
「確かにそうだな。」
「じゃあ…今送られてくる手紙も、同じ人物だとしたら…」
「俺たちの同級生の誰かが?」
つい最近同窓会が行われたばかりという事もあって、私はぞっとした。あの日、あの中に…この犯人がいたかもしれない。
「警察とかには話したのか?」
「一応、相談はね。でも、こんな手紙だけじゃ動いてくれないんだよ。実害がないとダメだって。」
「そうなのか…」
「こんな気分悪い手紙、じゅうぶん実害だよ。ねぇ?」
「はは…うん、確かに。」
「お待たせいたしました。ブレンドコーヒーでございます。」
店員が来て、私たちは一旦口を閉ざす。コーヒーを並べると、店員は恭しく礼をして去って行った。
「それで…どうするんだ?これ。」
「犯人を知るためには、まだ様子を見るしかないと思う。」
私が答えると、東条君は考えるように口を噤む。
「もしこれがエスカレートして、具体的な脅迫文になったら警察が動いてくれると思うし、そうじゃなくても…もう1年近く…高校から含めると何年も続いてるから、そろそろ何かボロを出してもおかしくないと思うんだよね。」
そう言いながら、私は紙を一枚持ち上げた。
「この…御幸先輩、って書いた時みたいに。」
「…そうだな。」
東条君も頷いて、神妙な顔でコーヒーを飲んだ。
「とりあえず、この3枚はもらってもいい?」
「ああ…うん。もともと、預かってただけだし…」
「ほんと助かったよ。東条君がいてよかった。」
心からそう言うと、東条君は少し照れ臭そうに笑う。
「もしまた何かあったら連絡してくれよ。俺にできることなら、何でも協力するし」
そう言う彼の言葉の言外には、少しの期待も含まれていそうで、私は少し同情に似た憐れみを感じてしまったけど…
「うん、ありがとう。」
今はまだ、仕方ないのかもしれない。そう思って、気付かないふりをして笑った。
***
東条君って、こうしてみると結構イケメンだよね。女の子から人気ありそう。
そんなことを思いながら彼の席に近づき、ひょいと顔を覗き込む。
「お待たせ。」
「えっ、ああ、牧瀬か…」
スマホを眺めていた東条君は少し驚いたように顔を上げ、ちらりと周りを見渡してはにかんだ。私は開いている方のソファ席――こういう風にさりげなくソファ席を空けとくところも紳士だなぁ――に座って、ちょっとからかってやろうと思いつく。
「ごめんねー、私一人なの。」
「…え?あ…いやいや、別にそんな…」
光が来ること、ちょっと期待してたんだろうなぁ。光が言ってた通り、動揺してちょっと笑ってるし。
「光、ドラマの撮影でさ。明日まで沖縄なの。」
「へー、そうなんだ。沖縄かあ、いいなぁ」
店員を呼んでそれぞれコーヒーを注文すると、少し冷静さを取り戻したようなポーカーフェイスで、東条君は鞄をあさり出す。
「それでこれ…電話で言ってたやつだけど」
「あ、うん。」
言いながら、東条君が取り出したのは3枚の紙。少し古くくしゃくしゃになったルーズリーフの切れ端だ。見ていいかと断って、その一つを開く。そこにはやはり見覚えのあるあの直線的な字で、侮蔑的な文章がつづられていた。
『勘違いブス』
『消えろ 尻軽女』
『御幸先輩に色目使うな ぶりっ子』
3枚すべてを見終わって、思わずため息を吐く。
「こんなのがいつも靴箱に入ってたらたまんないわ…」
「うん…そうだな」
「でもこれ…1年の時の、なんだよね?」
「うん。」
「ってことは…御幸さんのことを先輩、って書いてるから…同級生の誰かだよね。」
は、と東条君は目を丸くした。
「確かにそうだな。」
「じゃあ…今送られてくる手紙も、同じ人物だとしたら…」
「俺たちの同級生の誰かが?」
つい最近同窓会が行われたばかりという事もあって、私はぞっとした。あの日、あの中に…この犯人がいたかもしれない。
「警察とかには話したのか?」
「一応、相談はね。でも、こんな手紙だけじゃ動いてくれないんだよ。実害がないとダメだって。」
「そうなのか…」
「こんな気分悪い手紙、じゅうぶん実害だよ。ねぇ?」
「はは…うん、確かに。」
「お待たせいたしました。ブレンドコーヒーでございます。」
店員が来て、私たちは一旦口を閉ざす。コーヒーを並べると、店員は恭しく礼をして去って行った。
「それで…どうするんだ?これ。」
「犯人を知るためには、まだ様子を見るしかないと思う。」
私が答えると、東条君は考えるように口を噤む。
「もしこれがエスカレートして、具体的な脅迫文になったら警察が動いてくれると思うし、そうじゃなくても…もう1年近く…高校から含めると何年も続いてるから、そろそろ何かボロを出してもおかしくないと思うんだよね。」
そう言いながら、私は紙を一枚持ち上げた。
「この…御幸先輩、って書いた時みたいに。」
「…そうだな。」
東条君も頷いて、神妙な顔でコーヒーを飲んだ。
「とりあえず、この3枚はもらってもいい?」
「ああ…うん。もともと、預かってただけだし…」
「ほんと助かったよ。東条君がいてよかった。」
心からそう言うと、東条君は少し照れ臭そうに笑う。
「もしまた何かあったら連絡してくれよ。俺にできることなら、何でも協力するし」
そう言う彼の言葉の言外には、少しの期待も含まれていそうで、私は少し同情に似た憐れみを感じてしまったけど…
「うん、ありがとう。」
今はまだ、仕方ないのかもしれない。そう思って、気付かないふりをして笑った。
***