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飲み屋で東条を待つ間、俺は手持無沙汰にSNSを眺める。
投稿数の少ない光さんのアカウント。いつの間にか、子猫のアイコンからマグカップのアイコンに変わっている。赤と青のマグカップ。…御幸先輩とペアの奴かな。うわー、新婚っぽい…。
むずむずしながら投稿をさかのぼると、膝の上で眠る子猫の写真と共に、『預かっていたみーちゃんが今日おうちに帰ります。寂しいなー。猫飼いたくなっちゃった。』という文章があった。あの子猫、光さんの猫じゃなかったのか。GOODボタンの一覧を見ると、御幸先輩をはじめとして、牧瀬、東条、沢村、小湊、降谷、哲さん、奥村…ってほとんど皆反応してんじゃねーか!こんなに皆してこぞって反応返してたら光さんのアカウントだってバレるだろーが…!
そうやきもきしながら、俺だけ押さないのもなんだかなと思い、そっとGOODボタンを押す。…押しちまった。いやでも登録し合ってるし…反応返さねーのも悪いだろ、うん…。
「信二ごめん!遅れた!」
ドサッ、と荷物を置く音で、俺は弾かれるように顔を上げた。急いで来たのか少し焦ったような顔で、ひんやりとした外の空気を纏った東条が向かい側に座ったところだった。
「あ…おう、どしたの。」
「帰りがけに先輩に呼ばれちゃって…ごめん。」
「ああいや、全然いいけど。」
生中ひとつ、と店員に注文する東条を見て、あれ、と思う。なんか…嬉しそうだな、こいつ。
「…なんかあった?」
「えっ?なんかって、何?」
へらりと笑った顔を見て確信した。…絶対何かあっただろ、こいつ。
「お前普段はポーカーフェイスなのに、いっこだけめちゃくちゃわかりやすいことあるよなー。」
「は!?な、なんだよそれ…」
「光さんだろ。なんか良い事でもあったのかよ?」
「え…」
ぎくり、と東条の顔が変な笑顔のまま固まる。
「いや…良い事ってわけではないけど」
図星かよ。思わず笑いそうになるのを堪える。
ビールが来て、東条は3口ほど軽く喉に流し込むと、メニューを眺めはじめた。
「…で?」
「え?」
「いやだから、何があったんだよ。」
「ええ…それ聞く?」
「当たり前だろ!」
逃げ腰の東条を睨みつけると、東条は困ったように笑う。
「うーん…あんまり人に話さない方が良い話なんだけど…」
「はぁ…?」
「あ、信二のこと信じてないわけじゃないよ?」
「はあ…」
「…あっ、待って、今の駄洒落じゃね?信二を信じる…だって、あははは」
「おい、脱線すんのもいい加減にしろ!」
くそ、ちょっと笑いそうだったじゃねーか…こんなんで笑ってたまるか。
「わかった、わかったよ…話すから」
東条は笑い過ぎて涙目になった目を拭いながら店員を呼び、つまみを注文した。
それから、今日牧瀬から聞いてきたという話を俺に話した。
「うわー、また大変だな、光さん」
「うん…それだけ人気の証拠、とも牧瀬は言ってたけど…辛いのには違いないし」
「つか高校の時からだろ?怖すぎだろ…知り合いかもしれねえんだぞ?」
「それなんだよね…。」
「そんなに続いてんなら、大体心当たりとかねーの?」
「どうだろう、牧瀬はなさそうだったけど。」
「つか高校の時から御幸先輩のことを好きな奴が犯人だとしたら…御幸先輩に誰か心当たりねーのかな。」
はっ…、と東条が息をのんで俺を見た。
「…確かに!!」
「おっ…おう、そうだろ。」
「牧瀬にメールしてみる。」
ただの思いつきだったのに、思いがけず東条の反応が大きくて胸が跳ねる。東条はメールを打つと、スマホをテーブルに置いてビールを飲んだ。その、どこか活き活きとした顔を見て――つい口が開く。
「東条…お前さあ、」
「ん?」
「なんつーか、その…あんまり、関わらないほうがいいんじゃねーの。」
「え?なんで?」
「だって…中途半端に関わったらまた…情が湧いちまうだろ。」
東条はいつもの顔で、にこりと口角を上げた。
「何言ってんだよ。そんな大したことしてないって。」
「今はな。だからこれ以上はもう、牧瀬と御幸先輩に任せて、距離置いた方が良いって言ってんだよ。」
「別に俺は…そんなに、気にしてないけど…」
嘘吐け。光さんとの接点を見つけて…そこに自分の居場所を見いだせそうな気がして、喜んでるくせによ。
「とにかく…俺は止めたからな。」
そう言い捨ててビールを飲み干し、東条を見ると、東条は黙り込んで――ポーカーフェイスを張り付けていた。
投稿数の少ない光さんのアカウント。いつの間にか、子猫のアイコンからマグカップのアイコンに変わっている。赤と青のマグカップ。…御幸先輩とペアの奴かな。うわー、新婚っぽい…。
むずむずしながら投稿をさかのぼると、膝の上で眠る子猫の写真と共に、『預かっていたみーちゃんが今日おうちに帰ります。寂しいなー。猫飼いたくなっちゃった。』という文章があった。あの子猫、光さんの猫じゃなかったのか。GOODボタンの一覧を見ると、御幸先輩をはじめとして、牧瀬、東条、沢村、小湊、降谷、哲さん、奥村…ってほとんど皆反応してんじゃねーか!こんなに皆してこぞって反応返してたら光さんのアカウントだってバレるだろーが…!
そうやきもきしながら、俺だけ押さないのもなんだかなと思い、そっとGOODボタンを押す。…押しちまった。いやでも登録し合ってるし…反応返さねーのも悪いだろ、うん…。
「信二ごめん!遅れた!」
ドサッ、と荷物を置く音で、俺は弾かれるように顔を上げた。急いで来たのか少し焦ったような顔で、ひんやりとした外の空気を纏った東条が向かい側に座ったところだった。
「あ…おう、どしたの。」
「帰りがけに先輩に呼ばれちゃって…ごめん。」
「ああいや、全然いいけど。」
生中ひとつ、と店員に注文する東条を見て、あれ、と思う。なんか…嬉しそうだな、こいつ。
「…なんかあった?」
「えっ?なんかって、何?」
へらりと笑った顔を見て確信した。…絶対何かあっただろ、こいつ。
「お前普段はポーカーフェイスなのに、いっこだけめちゃくちゃわかりやすいことあるよなー。」
「は!?な、なんだよそれ…」
「光さんだろ。なんか良い事でもあったのかよ?」
「え…」
ぎくり、と東条の顔が変な笑顔のまま固まる。
「いや…良い事ってわけではないけど」
図星かよ。思わず笑いそうになるのを堪える。
ビールが来て、東条は3口ほど軽く喉に流し込むと、メニューを眺めはじめた。
「…で?」
「え?」
「いやだから、何があったんだよ。」
「ええ…それ聞く?」
「当たり前だろ!」
逃げ腰の東条を睨みつけると、東条は困ったように笑う。
「うーん…あんまり人に話さない方が良い話なんだけど…」
「はぁ…?」
「あ、信二のこと信じてないわけじゃないよ?」
「はあ…」
「…あっ、待って、今の駄洒落じゃね?信二を信じる…だって、あははは」
「おい、脱線すんのもいい加減にしろ!」
くそ、ちょっと笑いそうだったじゃねーか…こんなんで笑ってたまるか。
「わかった、わかったよ…話すから」
東条は笑い過ぎて涙目になった目を拭いながら店員を呼び、つまみを注文した。
それから、今日牧瀬から聞いてきたという話を俺に話した。
「うわー、また大変だな、光さん」
「うん…それだけ人気の証拠、とも牧瀬は言ってたけど…辛いのには違いないし」
「つか高校の時からだろ?怖すぎだろ…知り合いかもしれねえんだぞ?」
「それなんだよね…。」
「そんなに続いてんなら、大体心当たりとかねーの?」
「どうだろう、牧瀬はなさそうだったけど。」
「つか高校の時から御幸先輩のことを好きな奴が犯人だとしたら…御幸先輩に誰か心当たりねーのかな。」
はっ…、と東条が息をのんで俺を見た。
「…確かに!!」
「おっ…おう、そうだろ。」
「牧瀬にメールしてみる。」
ただの思いつきだったのに、思いがけず東条の反応が大きくて胸が跳ねる。東条はメールを打つと、スマホをテーブルに置いてビールを飲んだ。その、どこか活き活きとした顔を見て――つい口が開く。
「東条…お前さあ、」
「ん?」
「なんつーか、その…あんまり、関わらないほうがいいんじゃねーの。」
「え?なんで?」
「だって…中途半端に関わったらまた…情が湧いちまうだろ。」
東条はいつもの顔で、にこりと口角を上げた。
「何言ってんだよ。そんな大したことしてないって。」
「今はな。だからこれ以上はもう、牧瀬と御幸先輩に任せて、距離置いた方が良いって言ってんだよ。」
「別に俺は…そんなに、気にしてないけど…」
嘘吐け。光さんとの接点を見つけて…そこに自分の居場所を見いだせそうな気がして、喜んでるくせによ。
「とにかく…俺は止めたからな。」
そう言い捨ててビールを飲み干し、東条を見ると、東条は黙り込んで――ポーカーフェイスを張り付けていた。