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ガチャン、とグラスが音を立てて割れた。俺の言葉を聞いて、光は顔を真っ青にしてグラスを落とした。ふるふる震える手で口元を覆い、危うく呼吸を忘れそうになるほど動揺している。
その動揺を見て――俺もまた動揺した。俺の元に入ってきた知らせ。倉持が交通事故に遭い、病院に運ばれた――。
「…意識はあるらしい。でも重傷で、1ヶ月は入院…リハビリも必要だって。だから…選手として、復帰できるかどうか…」
「……。」
光はその言葉を飲みこむように息をのんで、息苦しそうに言った。
「す…すぐ、行きましょう。病院に…」
「…そ、そうだな」
倉持の母親は遠方だし、仕事も忙しくすぐに駆けつけられない。だから、万が一の時は俺の所にも連絡が入るようになっていた。俺が車の鍵を取ると、光は青ざめたままの顔ではっとした。
「…一也さん、運転は…」
状況が状況だけに、大丈夫だとは言い返せなかった。今は俺も動揺しているし…。
「…タクシー呼ぼう。」
「はい。」
光は頷いて、スマホでタクシーを手配する。すぐにつくとの応答があり、俺たちはとるものもとりあえずマンションを出た。
***
病院に着くと、倉持はまだ手術中で、俺たちはロビーに案内された。光とふたり、隣に並んで座り、夜の静かな病院で待ちぼうける。
光は祈るように手を組んで、前かがみになって膝に肘をつき、俯いていた。その横顔に、気付いてはいけない感情が現れているような気がして、俺は怖くなった。いや…普通だろ。倉持は…長い付き合いなんだし、これくらい心配でも…。
「…一也さん。」
光は不意に顔を上げ、俺を見た。
「一也さんは先に帰っててください。明日は試合だし…私が残りますから」
俺は思わず身を起こした。
「なんでお前が…」
「ご家族はすぐに駆けつけられないし、誰か傍にいないと…」
「だからってお前が…」
「他にいないでしょ?」
うっと言葉に詰まる。仕方ない状況だってわかってる、わかってるけど…。
「一也さん。」
俺を諭すように語気を強める光。俺は唇を噛んで、立ち上がった。
「…わかったよ。だけど…」
「…だけど?」
「……。…いや。」
俺は首を振って、光の手を撫でてちょっと繋いだ。光は宥めるような微笑を向ける。俺はそれに口角を上げて見せて、手を離した。
「…じゃあ、帰ってる。」
「うん。明日…頑張ってね。」
「ああ。」
頷いて、明日の応援には光は来られないのだろうなと思った。同時に、倉持が危ない時に、こんなことで不安になっている自分にも腹が立った。
今は緊急事態なんだ。それに、倉持には散々助けてもらってきたんだから。
俺は自分にそう言い聞かせて、病院を出た。
その動揺を見て――俺もまた動揺した。俺の元に入ってきた知らせ。倉持が交通事故に遭い、病院に運ばれた――。
「…意識はあるらしい。でも重傷で、1ヶ月は入院…リハビリも必要だって。だから…選手として、復帰できるかどうか…」
「……。」
光はその言葉を飲みこむように息をのんで、息苦しそうに言った。
「す…すぐ、行きましょう。病院に…」
「…そ、そうだな」
倉持の母親は遠方だし、仕事も忙しくすぐに駆けつけられない。だから、万が一の時は俺の所にも連絡が入るようになっていた。俺が車の鍵を取ると、光は青ざめたままの顔ではっとした。
「…一也さん、運転は…」
状況が状況だけに、大丈夫だとは言い返せなかった。今は俺も動揺しているし…。
「…タクシー呼ぼう。」
「はい。」
光は頷いて、スマホでタクシーを手配する。すぐにつくとの応答があり、俺たちはとるものもとりあえずマンションを出た。
***
病院に着くと、倉持はまだ手術中で、俺たちはロビーに案内された。光とふたり、隣に並んで座り、夜の静かな病院で待ちぼうける。
光は祈るように手を組んで、前かがみになって膝に肘をつき、俯いていた。その横顔に、気付いてはいけない感情が現れているような気がして、俺は怖くなった。いや…普通だろ。倉持は…長い付き合いなんだし、これくらい心配でも…。
「…一也さん。」
光は不意に顔を上げ、俺を見た。
「一也さんは先に帰っててください。明日は試合だし…私が残りますから」
俺は思わず身を起こした。
「なんでお前が…」
「ご家族はすぐに駆けつけられないし、誰か傍にいないと…」
「だからってお前が…」
「他にいないでしょ?」
うっと言葉に詰まる。仕方ない状況だってわかってる、わかってるけど…。
「一也さん。」
俺を諭すように語気を強める光。俺は唇を噛んで、立ち上がった。
「…わかったよ。だけど…」
「…だけど?」
「……。…いや。」
俺は首を振って、光の手を撫でてちょっと繋いだ。光は宥めるような微笑を向ける。俺はそれに口角を上げて見せて、手を離した。
「…じゃあ、帰ってる。」
「うん。明日…頑張ってね。」
「ああ。」
頷いて、明日の応援には光は来られないのだろうなと思った。同時に、倉持が危ない時に、こんなことで不安になっている自分にも腹が立った。
今は緊急事態なんだ。それに、倉持には散々助けてもらってきたんだから。
俺は自分にそう言い聞かせて、病院を出た。